2006年07月28日

制裁措置の緩急について

 先日の北朝鮮ミサイル発射問題に関して、当初、自分の思考の及ばなかった点について簡単に纏めておきます。

 先ず、制裁措置としての万景峰号入港禁止措置について。当初、6ヶ月という期限付きであることに対して「生ぬるい」と感じました。しかし、北朝鮮側の態度に変化がないにもかかわらず入港禁止措置を解除すれば、国内世論の反発は必至で、かといって、北朝鮮側にも面子があり、簡単に態度を改めるとは考えにくいです。経済制裁は発動だけでなく解除の判断も難しいことを考えると、北朝鮮の対応を見ながら6ヶ月ごとに審査する方が、制裁解除だけでなく制裁延長も対北カードになるので、運用に柔軟性が残ります。


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2006年07月17日

北朝鮮非難決議採択

 今回の北朝鮮ミサイル発射問題で、北朝鮮がならず者であること、中露と韓国の立場が明白になったことが確認されたことは意義があったと思う。メディアやネットの一部で、相変わらず日本政府の対応を非難する人達もいるが、そういう人達は日本の主張が100%通れば「タカ派政策だ」とか「右傾化」だとか「軍国主義化」だとかお決まりの批判をするだろうし、拒否権が発動されたり非難決議に落ち着いたりすれば「日本外交の敗北」と主張するだろう。現に、非難決議に落ち着いて、そういう意見が見られる。この種のどちらに転んでも日本を非難したいだけの、そういう「一段上の高みから庶民を眺めているような俺かっこいい」と思っている人達を炙り出せたことも収穫であった。

 一方では、中国に拒否権を行使させる状況に持っていって、北朝鮮に組する中国の問題性を浮き彫りにして、中国の国際社会での信用低下を図るべきだったという主張をする人もいる。私は、これは余り現実的だとは思わない。米国はイスラエルのヨルダン侵攻に対する決議案に拒否権を発動した。そういう国際情勢の下で、中国が拒否権を発動したところでどれほどの非難が起こるだろうか。イスラエルの場合は侵攻までしているが、北朝鮮のミサイルはいずれの国の領土にも着弾していない。前者への拒否権の発動が通用するなら、後者に通用しない訳がない。であれば、非難決議に軟着陸するのはやむを得ない。中国に拒否権を行使させても、安保理自体の信用低下にはなっても(そして国連改革の必要性へ)、中国の国際社会での信用低下に結び付くかは分からない。日本外交が欧米の中東政策に利用された向きもあるが、現状の日本外交では精一杯の成果を挙げたと思う。欧米は強かだと思うし、中露もその機微をよく熟知している。そんな中で日本はよく立ち回った。それは記事の見出しを時系列で見ても分かる。

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2006年07月14日

北朝鮮経済制裁決議案についてのメモ

 7月10日以降の北朝鮮経済制裁決議案についてのメモ。日本の初期の対応は素早かったし、かなりの部分で成功していたと思う。北朝鮮の同盟国である中国やG8サミット議長国であるロシアの面目を利用して、外交らしい外交を展開していたと思う。

 1993年のノドン発射の際には国際社会は何もしなかったし、98年のテポドン1号発射の際は法的拘束力のないプレスリリース(報道陣向け声明)に終わった。それに較べれば、当初、強気な経済制裁決議案を提出しておいて、中露が求める議長声明と検討させ、途中、安保理議長国であるフランスの二段階決採択案などもあったが、これにも動じず、中露に独自の北朝鮮非難決議案を提出させるところまで持っていった。このことは、充分評価に値する。中露の対案は、懸念と遺憾の表明に過ぎないのが対応として手緩いけれど、過去二回の国際社会の無策に較べれば、これでも遥かに進展している。

 しかし、ここにきて少し危うくなってきた。それはイランの核開発との関係。当初、経済制裁決議案の共同提案国であった英仏が、先ずは議長声明を行い、必要があれば制裁決議の採択を行うという2段構えの立場にシフトした。これは中露の切り崩し工作だろうけれど、では、バーターで取引されたものは何か。イランのウラン濃縮関連活動停止を求める決議案採択だろう、と。イランの核開発問題に関しては、中露も態度を軟化させ、フランスのドストブラジ外相は、この決議に従わない場合は国連憲章7章に基づく経済制裁などの可能性もあると言及している。この対イランにおける中露の妥協が対北朝鮮における英仏の転向へ、北朝鮮経済制裁決議案から非難決議案へと流れが変化した要因だと思う。

 どちらに転んでも日本を非難したいだけの一部偏向メディアに組する気はないが、正直、日本のタカ派外交が米英仏の中東戦略のダシに使われたという印象もないではない。それだけ欧米が、極東よりも中東情勢を緊急の課題と捉えているのだろうけれど、であれば、尚更、日本の常任理事国入りが必要のように思う。今回の件は、日本の防衛と外交の在り方、危機における政治家の技量、国際情勢に対する見方について、国民の目を覚ます契機になったと思う。まだ、最後の駆け引きがある。如何に中露から妥協を引き出すか。北朝鮮包囲網を作るか。


 現時点では北朝鮮を巡る今回の協議では、欧米が最も利益を得、日本はそこそこに粘り、中露は何とか面目を保ち、韓国は相変わらずだったという印象。

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2006年07月05日

ノドン、スカッドの発射について

【追記あり:07月11日】

(2006年07月05日)朝日:日本、万景峰号の入港停止など9項目の制裁措置
【対北朝鮮措置】
(1)北朝鮮側に厳重抗議。ミサイルの開発中止、廃棄、輸出停止と6者協議への早期かつ無条件の復帰を要求
(2)万景峰号の入港禁止
(3)北朝鮮当局職員の入国は原則認めない。北朝鮮からの入国についても審査をより厳格化
(4)在日の北朝鮮当局職員による北朝鮮を渡航先とした再入国は原則認めない
(5)日本の国家公務員の渡航を原則見合わせ。日本から北朝鮮への渡航自粛を要請
(6)日本と北朝鮮間の航空チャーター便は乗り入れを認めない
(7)北朝鮮に関するミサイル、核兵器などの不拡散のための輸出管理措置を厳格にとる
(8)北朝鮮による不法行為への厳格な法執行を引き続き実施
(9)北朝鮮の今後の動向を見つつ、さらなる措置を検討

【国際社会における連携】
(1)日米のあらゆるレベルで緊密な連携をとる
(2)国連安全保障理事会等で対処されるよう必要な働きかけを行う
(3)6者協議関係国、G8首脳などの機会を通じて情報交換を行う


 粛々と経済制裁を実行すべきですが、特に万景峰号の入港拒否については、元・朝鮮日報日本支社長で帰化された白眞勲議員も主張されているので、日本においてはほぼ入港拒否でコンセンサスが取れていると考えてよいと思います。半年間と言わず、北朝鮮の拉致・核・ミサイル問題に対する姿勢が変わるまで続けるべきです。万景峰号の入港を拒否したところで、北朝鮮国民の暮らしには殆ど影響はなく、かつ、金正日の懐を狙い撃ちできる経済制裁ですから。

(2006年06月11日)Blue jewel:白眞勲さん講演(2006-4-15)
(2006年07月05日)産経:万景峰号を半年間入港禁止
(2006年07月05日)読売:きょう緊急安保理非公式協議、中国の対応が焦点に


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2006年06月20日

テポドン2号の性能について

 先日から発射が噂されている北朝鮮の長距離弾道ミサイル、テポドン2号。北朝鮮製なので命中精度に疑問が囁かれているが、実際のところ、どのくらいの性能なのだろうか。基本データはMissile Search参照。個々の疑問は『軍事板常見問題 FAQ in 2ch_ Military BBS』参照。


初歩的な疑問1

 仮に日本に命中した場合、日本の被害がどれほどなのか。北朝鮮には、日本を直接の対象としているノドンが既に40〜200基配備されていると言われている。とすると、新たに開発したテポドン2号を日本用に使用してくる可能性は少なく、米国を目標としたものではないか。仮に、日本に被害が出る場合は、多段式ロケットの分離部分が落下してくる被害か、命中精度云々以前のミスなのではないか。しかも、ミサイルだけでは被害はそれほどでもなく、核を搭載して初めて現実的脅威になるのではないか。

 この点、『軍事板常見問題 FAQ in 2ch_ Military BBS』の軍事マニアの方々は、核弾頭が積まれていないという前提であれば被害は僅少と考えているようで、北朝鮮問題の専門家である重村智計・拓殖大学教授もTVで同様の見解を示していた(但し、重村教授は軍事の専門家ではないが)。テポドン2号発射といっても、今のところ物凄く不安になることはないのだろう。


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posted by sok at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 核・ミサイル問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする