2007年12月18日

市民による懲戒請求と大阪府知事選挙

 本エントリーでは、市民342人による橋下氏への懲戒請求と大阪府知事選挙について、年内までの報道とそれに対する感想を纏めています。追記が長くなったので目次を付け、構成を一部変更しました(12月31日16時30分頃)。


【目次】
1.橋下氏への懲戒請求について
2.大阪府知事選挙について
3.懲戒請求騒動について
4.関西財界は熊谷氏支援に傾斜(12月22日12時00分頃追記)
5.政党推薦出揃う(12月31日16時30分頃追記)
6.瀬戸弘幸氏が橋下氏の応援を表明(12月31日16時30分頃追記)
7.各候補者のマニフェスト(1月07日0時30分頃追記


1.橋下氏への懲戒請求について

 光市事件弁護団への懲戒請求を呼びかけた橋下徹氏に対して、全国の市民342人(京阪神を中心に11都府県の会社員、主婦、大学教授など)が大阪弁護士会に懲戒請求したという。市民による橋下氏の懲戒理由については「刑事弁護の正当性をおとしめたことは、弁護士の品位を失うべき非行だ」ということで(朝日12/16)、「賛同する市民らが9月以降、知人に声をかけるなどして広がった」と関係者は語っているとのこと(朝日12/17)。

(2007年12月16日)朝日:市民ら350人、橋下弁護士の懲戒請求へ 光市事件ウェブ魚拓
(2007年12月17日)朝日:橋下氏に懲戒処分を 市民342人が大阪弁護士会に請求ウェブ魚拓
(2007年12月17日)毎日:<橋下弁護士>大学教授ら342人が大阪弁護士会に懲戒請求ウェブ魚拓
(2007年12月17日)産経:340人が橋下氏の懲戒処分を請求ウェブ魚拓
(2007年12月17日)日刊スポーツ:橋下弁護士に懲戒請求ウェブ魚拓

(2007年12月18日)元検弁護士のつぶやき:橋下弁護士の懲戒請求350人

 橋下氏への懲戒理由に関しては、訴えに理があるように思う。ただ、そうであるならば、懲戒請求を行なう時期としては、東京弁護士会が弁護団の懲戒棄却の議決をした11月22日の直後に行なうか、今枝弁護士らの懲戒請求被害訴訟の結果を待って行なうのが筋だったのではないか。橋下氏が府知事に出馬表明した直後に懲戒請求をするとなると、選挙戦のネガティブキャンペーンに弁護士懲戒請求制度が利用されたという印象が強い。反橋下の人達からすれば、今がまさに相手陣営にダメージを与える好機なのだろうが。

 また、そもそも弁護士懲戒請求制度は、多人数による一斉利用や投票・署名感覚での利用は予期しておらず、その制度の不備を突いたのが橋下氏の煽動した懲戒請求であり、橋下氏はその点でも批判されていたのではなかったか。本制度は、弁護士自治の観点および個別の紛争当事者や利害関係人などからの申立てを予期してのもので、その目的から考えれば本来的使用に堪え得るものであった。今、「市民」が「世間」に取って代わっただけではないか。

 橋下氏の言説を契機に起こった懲戒請求騒動に憤りを覚えた人達が、橋下氏や懲戒請求者達と同様の手法に出る可能性も、ある程度は予想していた。まさか橋下氏が府知事選に出馬表明し、それに対するリアクションという形で行われるとは思わなかったが、7月2日の日記で次のように書いた。
 本請求が先例となれば、当事者の一方に肩入れする人達が相手の言質を取って裁判外から裁判に影響を与えようということにもなりかねません(裁判官が影響を受けることはないでしょうが、弁護側の心理的負担、訴訟準備などに影響する可能性があります)。そして、そのような先例は主義主張を同じくする者だけが独占的に使えるものではないでしょうから(※2)、司法に政治闘争を持ち込むことになりはしないかと危惧します。

※2 ある制度・先例が出来ると、主義主張を異にする双方の陣営がこれを利用するという構図はよくあることです。分野は違いますが、例えば(1)非拘束名簿式比例代表制になればタレント議員が増加すると批判していた政党が、同制度施行後にタレント議員を擁立したこと、(2)教科書検定に際して、文部科学省が諸説配慮を求める検定意見を付けたら、この『諸説配慮』が現政権と思想を異にする人達にも利用されたことなどが挙げられます。勿論、現政権と思想を同じくする人達が利用するということも考えられます。

 今回の懲戒請求は、請求者の中に大学教授がいること、請求日の前日に朝日新聞が記事にしていることから、弁護士会の事務や審査上の煩瑣を除去するように請求の一本化が図られているものと信じたいが、この点は先に挙げたどの記事からも明らかになっていない。それを抜きにしても、制度の予定外の懲戒請求を二度も見せつけられると空しくなる。

 とはいえ、想定外の運用の途を開いて外野からの政治闘争を仕掛けたのは、懲戒請求騒動に関して橋下氏を支持した人達や実際にテンプレートで懲戒請求した人達であり、彼らが今回の懲戒請求者を非難したり、皮肉を向けたりしているのを見ると、刑事弁護への理解が深まって沈静化したというよりも、単に「祭り」の燃料が不足して失速したのではないかという落胆もある。

(2007年12月17日)ニュース超速報!:12都府県の342人が橋下弁護士を懲戒請求 橋下弁護士がコメント発表


 なお、今回の懲戒請求について、今枝弁護士と懲戒煽動被害対策弁護団は関わっていない旨、コメントしている。以下、関連箇所を引用する。

(2007年12月16日)弁護士・未熟な人間・今枝仁:橋下弁護士に懲戒請求350人
記事以上の具体的な事情は、分かりません。
この時期に提出されるということで、やはり大阪府知事への立候補の影響があるのかないのか気になるところですが、さっぱり承知していません。
とりあえず、私や、懲戒扇動被害対策弁護団は関与していないということだけ、言明しておきます。
こちらは、民事訴訟で勝訴して、それを材料に、本格的に懲戒請求すべきか否か検討する予定でした。
懲戒請求の濫用を批判する立場の弁護士による弁護士への懲戒請求ですから、調査・検討義務の履行として慎重になした上で慎重に判断して。

(中略)

が、同じ理由での懲戒請求を大量に提出されることには、疑問があります。
懲戒請求は、数で決まる運動ではありません。
たくさん懲戒請求が出ると、それだけ弁護士会が真剣に受け取り、懲戒処分を出さざるを得なくなる、というのは橋下弁護士がなしたデマです。
多くの方の連名で1件の懲戒請求を十分な理由をもってなすことには意味がありますが、同じ内容の懲戒請求を多数提出することは、大阪弁護士会と橋下弁護士の事務を徒に増やすだけの効果しかありません。
1件1件を懲戒請求事件として事件番号を付けて立件され、訴訟のような厳格な手続きがなされ、懲戒請求をなした趣旨や理由について説明を求められるなどの負担が伴います。
次々と懲戒請求が続いている状況では、弁護士会も結論を出すタイミングを見計らおうとするため、処分の是非の判断が遅くなる可能性もあります。

この報道を見て後に続こうとされる方もいるかもしれませんが、すでになされた懲戒請求以上に調査・検討を尽くし十分にあるいはほかに理由を述べているのでない限り、慎重に考慮されることをお願いします。

(2007年12月17日)光市事件懲戒請求扇動問題 弁護団広報ページ:橋下弁護士に対する懲戒請求報道について
記事の中では,本件裁判のことについても触れられていましたが,当弁護団は,この懲戒請求には全く関係しておりません。
当弁護団員は,上記報道を目にして初めてこのことを知りました。どのような方々が懲戒請求をされるのかも,全くわからない状態です。

当弁護団は,「懲戒請求は多数の力を示して行うものではない」「懲戒請求は署名活動や社会運動のために用いられるべきものではない」と考えております。したがって,多数の市民による懲戒請求がなされるということについて強調した報道がされていることには,若干,違和感を覚えます。

報道されている懲戒請求の事由には,本件裁判での原告らの主張と共通するところがあります。しかし,橋下弁護士が選挙出馬を表明した直後であるために,政治的目的をもった懲戒請求ではないかという疑念を抱かれ,さらに,我々さえも巻き添えに偏った見方をされるとすれば,非常に残念なことだと思います。


2.大阪府知事選挙について

読売:大阪府知事選 特集 関西発

 12月5日、光市母子殺害事件差戻控訴審が結審した翌日、橋下氏の大阪府知事選挙出馬の報があった。この時は誤報ということで落ち着いたが、11日になって正式に出馬するとの報道がなされた。ネット上では弁護士懲戒請求騒動における橋下氏の言動をどう評価するかという点ばかり注目されているが、そのような観点から投票するという人はそう多くはないだろう。

 光市弁護団への懲戒請求は、東京弁護士会が請求棄却の決議を下すまでに7500件を超え、今枝弁護士個人だけでも約500件とはいうものの、一部の悪質な請求者の複数請求を纏めれば、思った程の広がりを見せてはいない。勿論、実際に懲戒請求された弁護士の方々にとっては、それでも充分に業務に支障の出る数ではあるが、伝え聞くところの実数は、懲戒請求騒動の経過や結末のみならず、その端緒すら知らない人がネット外に大勢いることを示している。ネット上で関心を集める話題がネット外でまで関心を集めるとは限らないし、府知事選挙となれば多岐に渡る評価基準の一つに過ぎない。

 橋下氏の持論である改憲論や核武装論についても、地方公共団体の首長の職務とは一先ず関係がないので、この先、府知事経験を活かして国政に打って出るという場合や府知事としての地位と知名度を活かして持論を積極的に展開しようとするのでもなければ、その方面からの批判はネガティブキャンペーンの域を超えない。また、そういった過激発言に共感して投票しようとする側も、期待を裏切られるだろう。橋下氏自身、出馬表明会見にて「出馬表明をしたことで個人的見解は慎まなくては。公の立場としては、現実的に核武装はありえない。現実の選択としてできない」と語っている。

 大阪府民が知事候補に望むのは、やはり財政再建や景気対策であって、橋下候補に対して投票するかどうかも、基本的にはこの観点からだろう。出馬表明の記者会見で示された候補者としての視点は、「子供が笑う街」づくりであり、予算における選択と集中として本日示された公約の素案では、「子育て・教育」「中小企業支援」「街づくり」に重点が置かれている。

(2007年12月12日)産経:「5年前から政治に関心」 橋下弁護士出馬会見詳報(1)
(2007年12月12日)産経:朝日:秘密徹底の民主、渡りに船の自民 大阪府知事選の舞台裏
(2007年12月18日)日刊スポーツ:橋下弁護士、米食給食実施、退職金半減
(2007年12月18日)スポーツ報知:橋下氏が選挙公約を発表…大阪府知事選
(2007年12月18日)産経:「子どもが笑う」「職員が汗をかく」 橋下氏が公約原案発表
(2007年12月18日)日経:橋下氏「府立高、学区を全廃」――大阪知事選へ公約素案
(2007年12月18日)朝日:話題先行、大阪府知事選 迎える府庁に不安も
(2007年12月18日)中日:中日:子育て支援充実と橋下氏 大阪府知事選で公約素案

 「子育て・教育」の項では、出産や産科医への補助、小児医療費への補助、府立高校の学区制撤廃、認証保育所の導入、公立中学校の校舎を使った低料金民間学習塾の設立、子供がいる世帯の公営住宅家賃の大幅減額など。先日の記者会見では公立中学校の給食実施率向上、小学校のグラウンドの芝生化、中高入試制度改革にも言及。

 「中小企業支援」の項では、大阪を特徴づけて企業を誘致する施策としてインフラ整備や中小企業のアピールを挙げていたが、具体例までは踏み込んでいない。「街づくり」の項では景観整備として大阪市中心部の石畳・街路灯設置や電柱の地中化、商業地の歩行者天国実施、府民マラソン大会など。先日の記者会見では御堂筋をイルミネーションで飾るという案も挙げていた。

 マニュフェストに関しては、今後、堺屋太一氏と協力して作成するとのことだが、出馬表明会見で示された施策案に関しては、財源についての言及が少なく職員の努力論になっていたこと、府知事というよりも市長や市議に求められそうな視点が多かったことが気になった。今回の素案では、財源について上記「3分野以外の予算を大胆にカットする」とし、知事の退職金50%減額や「情報公開局」の設置などに言及していたが、先の記者会見では「数字の入っていないマニフェストはマニフェストではない」という宮崎哲弥氏の言を引用していたこともあり、公示日には具体的な数字に言及するものと期待したい。

 全体としては中高年ではなく20代、30代の夫婦に訴えかける施策が多く、若年層の利益を代表する政治家が少ないことに不満を感じている人達にとって、魅力的な知事候補と映るかもしれない。


3.懲戒請求騒動について

 では、弁護士懲戒請求騒動における橋下氏の言動は、府知事選挙において特に考慮するほどの要素ではないかといえば、橋下氏は市議、府議、衆参議員といった政治家としての経験も実績もなければ、自身の政治的な意見を表明するような纏まった著作もない。実績がないのであれば、掲げられる政策だけでなく、その人柄も重要な評価対象となる。その点で懲戒請求騒動における言動は参考になると考える。

 橋下氏といえば、光市母子殺害事件差戻控訴審に関連して、弁護団懲戒請求騒動のきっかけを作った人物であり、その発言に関しては、他の出演者の質問に答える中での発言であったこと、出演するエンターテイメント番組を盛り上げようというサービス精神があっただろうこと、懲戒請求テンプレートサイトが登場するとは予想していなかったであろうこと等、同情する点も無いではないが、それらを差し引いてもなお、その発言とその後の言動には悪質なものがあった。

 懲戒請求騒動の何が問題であったかについては既に何度か書いた。弁護団22名のうち足立・安田両弁護士を除く20人の弁護士は、差戻控訴審以後に訴訟に参加した弁護人であり、彼らに対しては「訴訟遅延のための欠席戦術」という懲戒事由は一切該当しない。これは物事を時系列順に並べて思考する習慣さえあれば、法律の知識を必要とすることなく判断できる事柄である。このような基本的事実さえ押さえず、弁護団への誹謗中傷に飽き足らず、その職を奪いかねない懲戒請求運動を起こしたのは、橋下氏が代弁した「世間」の一部であり、その運動のきっかけを作ったのは橋下氏であり、その運動を容易ならしめたのはテンプレート集サイトの存在であった。

 基本的な事実に誤認があると気付いたならば、その時点で誤りを正し、既に流布してしまった誤情報については注意喚起し、懲戒請求運動を収束させるなり、正当な懲戒事由に差し替えるなりするべきであったが、橋下氏は論点を摩り替え、テンプレート集サイト管理人はより攻撃的になった。懲戒請求を支持していたブロガーやコメンターの殆ども、私の見た限りでは事実誤認に頬被りし続けた。

 弁護士508人が懲戒請求の中止を求める緊急アピールを発表した6月19日の時点では、請求数はまだ計数百件に留まっていた(『痛いニュース』6/19J-CAST6/20)が、光市事件弁護団から橋下氏が提訴された9月3日の頃には計3900件にまで増加した(毎日9/4『痛いニュース』9/5)。これは前年の全国の請求総数の約3倍にあたる。しかし、その後の7500件という請求数を考えると、きっかけを作った橋下氏自身が早期に騒動を収束する方向へ善処していれば、東京弁護士会の決議を待たずに騒動は沈静化したのではないか。

 また、視聴者に懲戒請求を薦めていた橋下氏自身は、提訴された当初こそ情報番組で「自分でも懲戒請求する」旨の発言をし(確か『スーパーモーニング』9月10日放送回)、ブログでは「自分を訴えた4弁護士について懲戒請求する」旨の文章を公開していたが、結局のところ色々と理由をつけて懲戒請求しなかった。このようにその場その場で態度を変える橋下氏の姿勢は、不誠実であると言わざるを得ず、その振る舞いは府知事選出馬否定時の説明、一転して出馬表明会見に至った時の弁明にも共通する。こうした不誠実さが改善されないことには、大阪に対する思い入れや政治に対する熱意も素直に評価できない。

 なお、橋下氏の府知事選出馬表明を受けて、サンケイスポーツが緊急アンケートを行なっている。対象は今月12日に梅田などを歩行していた府民100人。サンプル数が少ないとはいえ、他県の方々の危惧とは異なる慎重な結果が出ている。民主党が出馬要請した熊谷貞俊氏(大阪大学大学院工学研究科教授)の評判も悪くはない。橋下氏がその知名度とタレント性だけで優位に立てるほど府知事選挙は甘くないだろう。

(2007年12月13日)産経:橋下氏に「投票する」25% 「しない」48%


4.関西財界は熊谷氏支援に傾斜(12月22日12時00分頃追記)

 先日の韓国大統領選は、李明博氏(ハンナラ党/66歳)が鄭東泳氏(大統合民主新党/54歳)、李会昌氏(無所属/72歳)を破って当選したが、選挙の主たる争点は北朝鮮政策(宥和or強硬)ではなく、経済政策だったという。まあ、そうだろう。日本の状況を振り返ってみても、いつだって有権者の関心は年金や景気であった。郵政解散の時にしても、郵政民営化が国民の一番の関心事ではなかった。今度の大阪府知事選挙でも、基本的にはこの傾向は変わらないと考える。

 さて、橋下氏が発表した公約素案では、財源について「高齢者ら社会的弱者の予算が減るかもしれないが、それは仕方ない。大阪を元気にすることを目標にした」(先の産経12/18記事)と述べているが、投票率の高い高齢者層に背を向ける大胆な発言をしていたが、これは代わりとなる大票田を見つけた上でのことだろうか。案の定というか、推薦について公明党からは異論が出ており、白紙状態だという。

(2007年12月18日)朝日:橋下氏が自公にマニフェスト案提示、公明からは異論も
 一方、公明府議団は光沢忍政調会長らが応対した。この中で、公明側は「高齢者や弱者のセーフティーネットや観光振興など、党が力を入れてきた施策が欠落している」などと指摘。光沢氏は今後の対応について「正式な推薦要請は受けていない。まだ白紙の状態」と語った。

 現時点において、民主党・国民新党は熊谷氏を推薦し、関西財界も熊谷氏支援に傾いているとのこと。

(2007年12月19日)朝日:国民新党は熊谷氏推薦 大阪府知事選
(2007年12月20日)朝日:熊谷氏が公約ビジョン発表 小沢代表も同席 大阪知事選
(2007年12月21日)朝日:財界、熊谷氏支援に傾く 政策、太田府政の継続 知事選

 橋下氏が財界から支持されにくいだろう理由を幾つか考えてみる。例えば、出馬会見で「御堂筋をイルミネーションで飾る」と言っていたが、中ノ島周辺では12月1日から25日まで『OSAKA 光のルネサンス』という催しが行なわれていて、財界からも多数の協賛がついている。同種の既存イベントがあるのに、それに触れないという点で、橋下氏の素案には思いつきやアイデアの域を超えない弱さを感じる。その言動の軽さは下の記事からも分かる。

(2007年12月17日)ニッカンスポーツ:府知事選立候補の橋下、熊谷両氏ニアミス

 『橋下氏は午後6時半ごろ、1階で開かれていた作家の堺屋太一氏を囲む勉強会に現れ、約1時間懇談。記者団に「御堂筋パレードは面白くない、やめるべきだと言ったが、やり始めたのが堺屋さんだった」と笑いを誘った。』とあり、記事執筆者は好意的に捉えているようだが、私には笑えない。御堂筋パレード主催には堺屋氏の他にも財界その他の多くの人達が関わっている訳で、そうしたことへの配慮もなく否定できる人物と、共に汗をかこうという財界人がいるだろうか。誰に対しても、担ぐ御輿としての頼りなさを感じさせる候補だ。選挙も訴訟も、落ち着くところに落ち着くだろう。


5.政党推薦出揃う(12月31日16時30分頃追記)

(2007年12月23日)朝日:自民党大阪府連が橋下徹氏を推薦
(2007年12月25日)朝日:橋下氏、高齢者対策などを追加 公明党府議団に 知事選
(2007年12月28日)朝日:社民党、熊谷氏推薦へ 大阪府知事選
(2007年12月27日)朝日:公明党本部 橋下氏の推薦見送り方針 大阪府知事選
 来年1月の大阪府知事選で公明党大阪府議団が26日、橋下徹弁護士(38)の推薦を見送ることを決めたことを踏まえ、同党本部も橋下氏の推薦を見送る方針を固めた。同党府議団は推薦よりも、支援度合いが弱いとされる支持にとどめており、党本部や党府本部もこうした府議団の考えを尊重する構えだ。

 民主、国民新党に続き、社民党も熊谷氏を推薦、財界は熊谷氏に傾斜。共産党推薦は梅田氏。橋下氏推薦は自民党のみで、公明党は推薦ではなく支持に留めることになった。政党・財界といった組織票の大まかな流れについては出揃った。思ったほど橋下氏優勢という訳ではなく、一先ず安心。

 後は、浮動票の行方であるが、先日、知人10数人に府知事選について尋ねたところ、橋下氏圧勝という予想であった。圧勝の理由を尋ねたところ、大体、次のような答えだった(民放をあまり見ないので橋下氏の人気がどれほどのものかは分からないが)。
1.顔と名前が一致する強み
 情報番組やバラエティー番組に多数出演していて知名度が高いことを挙げる人もいれば、弁護士でありながら堅物ではないキャラクターに親しみを感じるという人もいた。反面、言葉の軽さとタレント知事への警戒については全員が感じているようではあった。

2.イメージと政策が一致する強み
 バラエティー番組で度々披露される七児の父としてのエピソードと、府知事選出馬における氏の若年夫婦向けの施策がリンクし、候補者名を見れば主張する施策が思い出せるとのこと。橋下氏→子沢山→子育て支援というイメージの連鎖。

3.懲戒請求騒動への関心
 自分が尋ねた限りでは、殆どの人が知らないか、知っていてもそれが法的に妥当であるかまでは分からない様子で、請求が棄却されたことまでは把握していなかった。やはり投票行動には大きく影響しないだろう。


6.瀬戸弘幸氏が橋下氏の応援を表明(12月31日16時30分頃追記)

 『維新政党・新風』副代表の瀬戸弘幸氏が、自身のブログにて橋下氏の勝手連を創って応援すると表明している。瀬戸氏といえば、最近では星条旗侮辱デモ騒動やナノテク食品の販売構想、今夏の参院選出馬(『ニコニコ動画』での演説動画)などで、一部のネットユーザーから注目されていた人物。今回、橋下氏を応援する理由は、同和対策予算の削減と橋下氏の核武装発言が瀬戸氏の信条と一致するからとのこと。

(2007年12月30日)せと弘幸Blog『日本よ何処へ』:橋下弁護士を応援しよう!

 しかし、核武装発言については、橋下氏自身が今月12日の府知事選出馬表明会見にて個人的な見解は封印すると既に表明している。応援するのであれば候補者の出馬表明会見の要旨くらいはチェックした方がいいし、核武装という論点は府政と関係がない。同和対策予算の削減については、橋下氏だけでなく共産党推薦の梅田氏も言及しており、こちらははっきりと「同和事業の終結」を表明している。

(2007年12月27日)朝日:教育論で激突、暮らし向上に三様 知事3候補初顔合わせ
 核武装や徴兵制をめぐる過去の発言については「私人の立場での話芸。公職の立場ではそうした表現や考え方はとれない」と語った。

(2007年12月27日)朝日:府財政再建、大阪活性化で舌戦 知事選立候補予定3氏
 年間3兆円の予算規模ながら5兆円の借金を抱える府財政の再建策では、梅田氏が大型開発見直しや同和事業の終結を表明。熊谷氏は大阪市などとの二重行政の解消による経費削減を挙げ、橋下氏は府の出資法人の全面的見直しや府所有施設の売却などを提案した。

 勝手連型の選挙といえば、今年3月の東京都知事選挙における浅野史郎氏の惨敗を思い出す。思想的関心で結集した反石原陣営の主張は、有権者の関心事である経済政策とは程遠かったのみならず、勝手連のイデオロギーが目立って、浅野氏の独自色が殆ど伝わってこなかった。結果として、都知事選は石原vs反石原という構図に終始した。勝手連が関わって失敗した例がそう遠くない過去にあり、また、橋下氏自身も思想性の強い発言を控えているにもかかわらず、思想的関心から応援を表明するというのが果たして応援になっているのかは不明ではあるが、仮に応援するにしても反同和や核武装発言だけではなく経済的観点からの言及があっても良さそうなものだ。まあ、橋下氏の勝手連を創ることでネット上での注目を集め、次期衆院選では一議席を確保しようという意図なのかもしれない。

 イデオロギー的な思惑で府知事選挙に関心を寄せるのは瀬戸氏だけではない。まだ当選してもいないうちから橋下打倒を叫ぶ人も見かけた。この選挙に思想的関心を寄せる人からは、保革を問わず、府の財政再建や景気対策には関心が無いということがよく伝わってくる。個人的に橋下氏自身は好きではないが、選挙が野次馬の政治的キャンペーンに利用されるというのも、見ていて気持ちの良いものではない。各立候補者には、外野の声に流されずに経済政策で競ってもらいたい。

(2007年12月29日)朝日:大阪府、2600億円「赤字隠し」 再建団体回避狙う
(2007年12月31日)朝日:総額3500億円に 大阪府の「赤字隠し」


7.各候補者のマニフェスト(1月07日0時30分頃追記)

(2007年12月30日)毎日:’08知事選:「おおさか」を笑顔に 橋下氏がマニフェストウェブ魚拓
(2008年01月05日)毎日:’08知事選:「府民の生活が第一」 熊谷氏がマニフェストウェブ魚拓
(2008年01月05日)産経:【大阪府知事選】マニフェストを比較すると(1)ウェブ魚拓
(2008年01月05日)産経:【大阪府知事選】マニフェストを比較すると(2)ウェブ魚拓

 梅田氏、橋下氏は、府知事選用のウェブサイトを用意しているので、そちらのURLにもリンクしておく。熊谷氏に関しては、今のところ研究室のページのみなので、プロフィールのページにリンクしておく。熊谷氏のマニフェストについては、上記毎日記事で確認のこと。熊谷氏の府知事選用ウェブサイトも公開されたのでリンクしておく(1月13日19時45分頃追記)。

庶民派弁護士 梅田章二がゆく
トライ!「おおさか」の笑顔へ。橋下(はしもと)とおるサイト
熊谷貞俊(熊谷さだとし)公式ホームページ

 橋下氏が当初の約束通り、17の重点事業にかかる数値を出した点については、先ずは中身の検討とは別に、評価する。但し、橋下氏が詰めの甘い人物であることは、次の記事からも改めて分かることなので、府民にはそういった点も考慮した上で他候補者との比較をされることを望む。

(2008年01月06日)日刊スポーツ:橋下氏大ピンチ!告示まで街頭演説なし
 大阪府知事選(10日告示、27日投開票)に出馬表明しているタレントで弁護士の橋下徹氏(38)が告示前に街頭演説できないことが明らかになった。同氏の陣営は5日、街頭演説に必要な警察への道路使用許可申請をしていないことを明かした。ライバル陣営が既に“第一声”をあげているのに対し、前哨戦からつまずいた格好だ。また自民、公明両党本部の推薦も見送り濃厚で、さらにピンチが広がった。

 「街頭演説に出たいが、警察の道路使用許可が取れないんですよ」。

 やる気満々の橋下氏だったが、告示前に政策をアピールする街頭演説はできない見通しだ。同氏の選挙事務所によると「許可を得るのが極めて難しいと判断し、申請を見送った」という。手続きが進んでいると思っていた橋下氏だが、事前折衝しただけで申請は行われていなかった。

 大阪府警によると、一般的に道路使用許可は利用の7日前に使用場所を管轄する警察署への申請が必要で、街宣車使用の場合は警察の車両確認も必要になる。年末年始の休みもあり、告示前に街頭に立つには、最終リミットは昨年12月28日だった。大阪府選挙管理委員会は「政策、ビジョンなどの普及なら道路使用許可を取っていれば選挙活動にあたらない」という。公職選挙法では、告示後の道路使用は「演説者が一定場所にとどまり、定められた標識をつけていれば」街宣車ともども“特例扱い”となる。

(後略)

 その他、橋下氏を巡っては、公明党が推薦を止めて支持に留めたのに続いて、自民党にも推薦見送りの動きが出ているという。告示日前になって公明党の反応を見て推薦を見送るのであれば、自民党は最初から橋下氏の擁立など考えるべきではなかった。橋下氏のタレントとしての知名度に注目して担ぎ出し、公明党の顔色を窺って推薦を思い留まるというのでは、府民の目に自民党はどのように映るだろうか。

(2008年01月05日)イザ!:橋下氏推薦見送りの公算 大阪府知事選で自公党本部
 10日告示、27日投開票の大阪府知事選で、自民党本部と公明党本部が推薦、支持などの対応をとらない公算が大きいことが5日、分かった。弁護士でタレントの橋下徹氏(38)に対し、自民府連が推薦を決めた一方、公明の府本部は推薦を見送り、府議団の支持にとどまったことから、「自公」の枠組みを原則とする両党本部が態度を決めかねているとみられる。

 橋下氏をめぐっては、「2万%ない」などと出馬を否定したのに撤回したことや、核武装などの過激発言などで公明の支持組織の中で批判的な声が相次いだ。公明府議団が橋下氏と面会を重ね、推薦を検討したが、結局は推薦を見送り、府議団の支持という形で決着した。党本部との橋渡し役となる府本部は了承したが、いまだに正式な決定をしていない。

 自民府連幹部は産経新聞の取材に、自民、公明両党本部は「対応を協議中」としたうえで、「中央では『自公』の足並みをそろえるのが基本。公明府議団の『支持』が対応を難しくしている。自民党本部だけが推薦することは避けたいはずだ」と説明。「結論は週明け以降だが、告示に間に合わないかもしれない。自民府連だけの推薦という形もありうる」としている。

 一方で、無党派層への浸透が勝利のカギとなる橋下氏にとっては、“政党色”を前面に出さない方が得策という判断が両党中央で働いているという指摘もある。

(後略)
posted by sok at 21:30| Comment(0) | TrackBack(2) | 光市母子殺害事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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