(2007年10月04日)イマジンのそこまで言って猿蛇狼怪 話せばわかる?問答無用?
(2007年10月05日)イマジンよ、そこまで行っていいんかい?
『委員会』に出演することのデメリットは既にネット上でも議論されていることですが、それとは別に、出演することで伝わることもあります。弁護団がネット上で非難されるような「鬼畜外道」な人達ではないということ、この一点が伝わるだけでも番組出演のメリットは大きいと思います。批判者達の脳内にある仮想の弁護団ではなく、遺族や被告人のことを思って泣きもすれば、脅迫に怖れもする生身の人間であること、本村さんの意見陳述を聴いて悩む姿は、(ネット上の一部にある独善的な「世間」ではない)世間に対する訴求力を持ち得ます。その生身の人間の部分に由来する行き違いを解消し、一人歩きしている仮想の弁護団像を取り除くことが出来れば。そして、刑事弁護という公益。
讀賣テレビ放送報道局局次長で『委員会』の司会の一人である辛坊治郎氏は、2007年9月9日放送にて次のように発言しています。
「ただね、いま番組として弁護団の皆さんに出てきて頂きたいのは、別に橋下さんと、その、論争してくれって言うんじゃなくて、たとえばまあ、あの、世の中の人、疑問に思ってるのは、ね、「あれ裁判って言いながら被告を守るといいながら、もしかすると死刑廃止の社会運動のように見える」と。「あれが刑事弁護としてさあ、それがどうなんだろうか」とか。それからまあ、いわゆる死刑廃止を主張してらっしゃいますけど、死刑の是非論についてどうなんだとか、いうことについて、議論を深めたいので、ぜひ出てきて頂きたい、とこう申し上げているわけでございます。」
そうであるならば、取るべき言質は、第一に、論争のための『委員会』出演ではないということ、第二に、弁護団は法廷で死刑廃止を主張しているのではないので、死刑の是非論にも立ち入らないということではありませんか。尤も、死刑廃止論者以外も弁護団に参加していることは伝える必要がありますが。巷間言われている疑問のうち、守秘義務との観点から話せる範囲内のことに答えるという前提での出演を確認すること、スタジオは裁判所ではないので被告人に如何なる刑が妥当であるかを論じるのは適当ではないこと、橋下弁護士も弁護内容自体は問題としない旨をブログ上で書いていること等、事前にプロデューサー側と確認できると思います。
そして、それらを前提にして、番組側で前以て疑問点を整理し、番組内で質問が反復したり、循環論法に陥らないように努めさせることが重要です。論点整理という点では、(1)橋下弁護士が問題視していた一審二審の弁護団との主張の違い、(2)弁護団が問題視している懲戒請求の問題、(3)刑事弁護の重要性、この三点を主軸に番組が構成されるように提案されてはどうでしょうか。議論をふっかけたり、相手の話を遮るような論者(三宅久之氏、勝谷誠彦氏など)に対して、司会者が公正中立な言論の交通整理をするように確認した方が良いです。編集や時間的制約の中で伝えられないことを想定して、番組内テロップや『委員会』HPにて、今枝弁護士のブログか「光市事件懲戒請求扇動問題 弁護団広報ページ」のURLを明示するように要請してみても良いと思います。
また、10月5日収録で7日放送の『委員会』ではテーマの一つが“「万死に値する」・・・厳罰化の中で”(ゲストは菊田幸一明治大学名誉教授)ということなので、この回の議論の状況によっては、他の番組出演者に関しても、弁護団の対応について賛否同数の論者を揃える必要性を、プロデューサーに対して説得できるかもしれません。例えば、関西ローカル番組『ムーブ!』にも出演している大谷昭宏氏は、同番組中で橋下弁護士の対応を批判していました。大谷氏に限らず、日頃、関西ローカル番組に出演している論者であれば、急な出演依頼でも都合がつき易いかもしれません。落ち着いた対話をするには、相手の側にもそれ相応の姿勢が必要です。讀賣テレビ放送の「誠実そうなプロデューサーさん」に対しては、その点で更なる誠実さを要求されてはどうでしょうか。
『委員会』での橋下弁護士の発言(およびそれを編集でカットせずに放送した讀賣テレビ放送の判断)がきっかけとなって懲戒請求運動が起こったこと、番組出演要求(9月9日放送回)よりも懲戒請求発言(5月27日放送回)が先行したこと等を鑑みると、放送局側にも非はあるので、番組制作者側に編集権があり、出演者側に表現の自由があるとはいえ、今枝弁護士が出席の承諾と引換えに様々な提案や駆け引きをすることは可能と思います。番組HPの『大会議室』での議論を見ても、弁護団批判者への批判や懲戒請求への批判も掲載されているので、番組制作者の側にも公正中立への思い、『委員会』が懲戒請求の端緒となったことついての認識はあるでしょうから。
さらに『委員会』に出席する場合、橋下弁護士の扱いについても交渉してみる余地はあります。例えば、『委員会』では環境問題を取り上げた2007年3月25日放送回にて武田邦彦教授(中部大学総合工学研究所教授)が出演し、放送後、武田教授の『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』(洋泉社/2007年2月発売)が25万部を超えるベストセラーになりました。その後、6月3日放送回(※)にて、武田教授を批判する細田衛士教授(慶應義塾大学経済学部教授)を武田教授と共に出演させ、互いの言い分を話させ、出演者からの疑問に答えさせる機会を与えていました。その際、パネラー席である雛壇とは異なる席(司会者の横)に2人を座らせ、雛壇のパネラーからの質問に応えさせていました。最早、橋下弁護士も当事者の一人ですから、そのように別席を用意するように要請してみても良いかもしれません。
(※)この時の放送を見た印象では、環境問題に詳しくない私には細田教授の説明に分があるように思えました。その後、細田教授の著書『環境経済学』(有斐閣/2007年3月発売)が大売れしたかは知りません。
ネット上では『委員会』における編集の程度についても懸念があるようですが、これは過去の放送を元に検討されてはどうでしょうか。南京事件論争を扱った2004年10月17日放送回に保守系言論人の西尾幹二氏が出演したことがあります。その翌日、西尾氏のブログにて、『委員会』の編集に関する批判がなされていました。南京事件論争の是非はともかく、ここで示された編集の程度を念頭に、番組プロデューサーと交渉をされてはどうかと思います。
(2004年10月17日)ユウコの憂国日記:「たかじん」南京虐殺、靖国参拝など(ゲスト:西尾幹二)
(2004年10月18日)西尾幹二のインターネット日録:「たかんじんのそこまで言って委員会」に出席して
以上、取り急ぎ纏めたものなので、既に弁護団で検討済みのことを書いているかもしれません。今枝弁護士の最終的な判断を尊重しますが、ただ、交渉を重ねて決裂するのと、相手の世間主義という主張に乗っかって出演依頼を断るのとでは、番組視聴者やブログ閲覧者の心証も大きく異なってきます。しかも数で言えば4000件超にも及ばない31件の「世間」を持ち出して、“世間の風が「出演するな」「しないで」「やめてー」とのことですので。決して「逃げた」とか言わないでください。”と茶化すようなエントリーは、今枝弁護士にそのような意図はなくとも、相手に対して失礼になりかねず、返って誤解を招くのではないか、と思います。
今は、明日の『委員会』で菊田幸一教授がどのように扱われるか、パネラーの対応やネット世論の反応がどのようなものなのかに注目したいと思います。そこにこれまでよりも真摯な対話があれば、出演を前向きに検討してみても良いのではないでしょうか。橋下弁護士が代弁する「世間」だけが世間ではありません。メディアを通して弁護団の言い分を知る機会は必要だと考えます。今枝弁護士の『委員会』出演については、以上のような条件付きで賛成します。
橋下弁護士のエントリーについて(10月7日19時00分追記)
(2007-10-06 08:34)橋下徹のLawyer’s EYE:原告今枝弁護士へ(2)
昨日2時にこのエントリーを公開し、同日昼頃に橋下弁護士のブログを見たら、予想通りの反応をしていました。世間主義に世間主義で応じれば、このような批判が出るだろうことは想定できたので、その点は特に驚きはしませんが、「番組に出演すれば、総攻撃にあうことは間違いない。」や「一線で活躍されている論客からの最高の反対尋問を経験してみてください。」という言葉からは、橋下弁護士が討論する気満々であるということが分かりました。なお、下記エントリーでは、橋下弁護士は「何でもかんでも情報発信すればいいわけではありません。」と言っています。
(2007-09-30 11:51)橋下徹のLawyer’s EYE:原告今枝弁護士へ
【当ブログの関連エントリー】
(2006年06月21日)山口県光市母子殺害事件とネット言論
(2007年07月02日)刑事弁護人の懲戒請求について
(2007年07月07日)NHK 特報首都圏『ネットの“祭り”が暴走する』テキスト起こし
(2007年09月09日)橋下弁護士が提訴された件について
(2007年09月12日)橋下弁護士の主張する“世間への説明責任”はネット上の“世間”に正確に伝わっていたか
(2007年09月22日)弁護団と批判者のすれ違い
(2007年09月24日)光市母子殺害事件裁判の弁護人批判について
あの番組に出るということは、ルールの分からない人にルールの当否どころか弁護団の当否を判断させることになります。それには賛成できません。
また、今枝弁護士が出て万一答えに詰まったり、「自分も嘘だと思うけど言うしかない」などと口を滑らせば、被告人自身の利益にもならないことになりますし、例え言い負かしても裁判は何一つ有利になりません。
私は、光市事件と関係なく、弁護の限界やマナー、説明責任や日本の裁判の構造などといったもっと一般的な問題を先に検討させ、基本ルールだけでも教えた上でするべきであると思います。基本ルールを教えなければ、いくら各論を叫んでも、特に「今回説得すべき対象」には分かってもらえないように思います。
私のブログでもあれほど長文を用いながら、何万字もの説明をしてそれでも説明し切れません。佐藤博史教授はそれで本を一冊書いています。(橋下氏が答弁書に引用しています)また、弁護と言う原理の裏づけは憲法の基本原理(民主主義<個人の尊厳)にさえ遡る必要も出てきます。
私は関東在住で見られませんが、あの番組は確か1時間だったと思います。実質その4分の3くらいの時間で、そこまで深く一般論に触れ、さらに個別事件を討論して検討するのは、時間が少なすぎるように思います。
また、そういう番組を前提にするなら、今枝弁護士ら担当の弁護団ではなく、先述の佐藤教授など刑事弁護の学者の権威か、少なくとも刑事弁護に造詣の深い弁護士が適当であろうかと思います。
この件に関する今枝弁護士の対応のまずさは賛成です。私は今枝弁護士は橋下氏を気にしすぎだと思います。
参考にします。
現在の『たかじんのそこまで言って委員会』は、CM込みで1時間半の番組です(放送時間は日曜13時30分〜15時00分)。収録時間は大体3時間と言われています。その全てを充てたとしても、弁護団批判者の全ての疑問に答え、納得させられるとは思えません。また、相手はテレビでの議論に慣れた人ばかりで、数の上でも今枝弁護士が不利です。一人で乗り込むのであれば糾弾会になってしまいます。もし、議論や討論をするのであれば、出演しない方がいいと思います。ただ、その場合は、ほぼレギュラー出演している橋下弁護士が機会あるごとに番組内で弁護団批判を繰り返すであろうことは予想できます。
出演を検討するのであれば、論争をするのではないという点を強く確認し、弁護団に理解を示す論者を揃え、論点を絞って説明して、橋下弁護士の“世間への説明責任”論を封じるという方向で思考すべきであると考えます。テレビに出て(議論・討論するのではなく)説明しさえすれば、形式上は橋下説の唯一の拠り所である“世間への説明責任”論は崩せます。但し、橋下弁護士は昨日のエントリーにて「番組に出演すれば、総攻撃にあうことは間違いない。」や「一線で活躍されている論客からの最高の反対尋問を経験してみてください。」と書いていますが、このような彼の挑発に乗る必要はありません。
出演交渉はあくまで番組側と行なうのですから、『委員会』の司会の一人であり讀賣テレビ放送報道局局次長である辛坊治郎氏の先月9日の発言を言質とし、それを基に交渉を有利に進めれば良いと思います。懲戒請求騒動との関係でいえば、今枝弁護士らが被害者ですから、被害者が糾弾会のような番組に釈明に出向かなければならないというのは理不尽な話で、番組制作者側に対して糾弾会とならないような場を提供するくらいの誠意は求めても良いと思います。その交渉の結果、出演を見合わせる、辞退するというのであれば、先日の今枝弁護士のエントリーよりも筋が通ります。
出演するのであれば、院生さんが指摘されるように、弁護団の当否を判断させてはなりませんし、互いに相手を言い負かすという状況に持っていってもいけません。スタジオは裁判所ではないし、パネラーや番組観覧者、視聴者は裁判官でも裁判員でもありません。あくまで(1)橋下弁護士が問題視していた一審二審の弁護団との弁護方針の違い、(2)弁護団が問題視している懲戒請求の問題、そして(3)刑事弁護の重要性についての説明に徹するべきです。(3)だけであれば、佐藤博史教授や他の学者、弁護士でも構いませんが、(1)と(2)の説明については光市裁判の弁護団でないと説明できないでしょう。
尤も、関東の国民が見ることも出来ない番組で、「世間」「世間」と言われる筋合いもありませんから、関東で放送されない『委員会』を無視して、全国ネットの番組で、それもNHK日曜討論のような識者が落ち着いて説明できる番組に出演して、“世間への説明責任”を形式上果たすという方法もあります。