2007年07月16日

参院選と拉致問題に対する国民の「熱気」について

 7月29日の第21回参議院議員通常選挙にて、中山恭子首相補佐官が議席を取れるかどうかが、日本国民の拉致問題に対する「熱気」の度合いを占うものになる、らしい。

(2007年07月14日)雪斎の随想録:「拉致敗戦」という記事 続

 確かに一つの考慮材料として見ることは出来るが、しかし、このような論法に従うならば、2004年7月11日の第20回参議院議員通常選挙にて、増元照明氏が立候補し、落選した時点で、日本国民の拉致問題に対する「熱気」は冷めていたとも言えるのではないか。勿論、首相補佐官の中山氏と一民間人の増元氏を同一に論じる訳にはいかないのだろうが、拉致被害者救出を訴える象徴的存在という点で見れば、増元氏が訴求力において中山氏に見劣りするとは思えない。「熱気」というものを測るだけであれば、象徴的存在の訴求力の比較において、両者は充分並ぶ。

 日朝平壌会談から2年を経ることなく、前回参院選の時点で、国民の拉致問題に対する「熱気」が冷めていたのだとすれば、今、改めて、まるで新たな要素であるかのように、その「熱気」の度合いを占うことに如何なる意味があるのだろうか。今回、改めて同手法で国民の「熱気」の度合いを測ろうとするということは、前回参院選での増元氏落選では「熱気」は冷めなかったか測れなかったともいえ、であるならば、今回の結果をもってしても「熱気」の度合いは占えはしない。

 拉致問題は国民の表面的な「熱気」(その中には拉致問題を単に中国・韓国・北朝鮮を罵倒するための材料程度にしか考えていない者の「熱気」も含まれるだろうが)に関係なく、日本政府が国民の生命と身体に関わる問題として、被害者の返還を要求していく事柄だと考える。表面的な「熱気」を重視するのであれば、日朝平壌会談直後の「熱気」は、経済制裁の発動をすぐにでも発動するに足る高まりを備えていただろう。だが、そのようなことはなかった。

 少し前に自民党と民主党の幹部が辞任や政界引退を示唆し合って、互いに参院選敗戦時の掛け金を釣り上げているかのような報道があったが、それに似た、何か政治的意図を持ってこの言説が語られているのであれば、参院選の議席獲得が「熱気」の度合いを占う真新しい物差しであるかのようにネット世論に提示されているのであれば、投票結果次第では、参院選後に「国民の暗黙の了解」と称して、拉致問題を置き去りにするという空気が醸成されるのではないかと危惧する。

(2007年06月25日)産経:参院選で過半数割れなら辞任 自民・中川幹事長が示唆ウェブ魚拓
(2007年06月25日)毎日:参院選:鳩山民主党幹事長「負けたら辞任」ウェブ魚拓
(2007年07月06日)朝日:過半数取れねば菅氏も辞任意向 「代表とともに行動」ウェブ魚拓
(2007年07月08日)毎日:参院選で与野党逆転できなければ政界引退=小沢民主代表ウェブ魚拓
(2007年07月08日)毎日:渡部恒三氏:参院選敗北なら「政界引退」 小沢氏同様にウェブ魚拓



 1983年10月9日、アウン・サン廟に仕掛けられた爆弾によって韓国閣僚らが暗殺されたラングーン事件以来、ミャンマーと北朝鮮の国交は断絶していた。この事件は、米国が北朝鮮を「テロ支援国家」と指定する根拠の1つと言われていたが、2007年4月26日、北朝鮮はミャンマーと国交回復の合意文書に調印し、同事件は政治的に決着した。米国が北朝鮮を「テロ支援国家」に指定する根拠には「よど号」犯の隠匿もあるが、北朝鮮は「よど号」犯関係者の国外退去を進めていて、この点でも指定解除に向けて、北朝鮮は着実にその要件を押さえつつある。

 拉致問題は「テロ支援国家」指定の条件に当たるのか。米国高官の表現は、はっきりしない。拉致問題と「テロ支援国家」指定を切り離すべきではないと考える高官や議員もいれば、拉致問題は「テロ支援国家」指定の前提条件ではないと考える高官もいる。はっきりしない状況で、米国の対応に期待を寄せるだけというのでは能が無い。解除しないように米国に働きかけるという方向だけでなく、日本が単独で行なえることを模索すべきであると考える。

(2007年03月15日)読売:北のテロ支援国家解除、拉致解決が先決…米議員が書簡ウェブ魚拓
(2007年04月26日)朝日:米NSC部長 テロ支援国家解除、拉致と切り離さずウェブ魚拓
(2007年05月12日)朝日:「拉致解決を条件にせず」北朝鮮テロ支援国家解除で米側ウェブ魚拓

 日本単独で行なえることとしては、例えば、帰国した「よど号」犯関係者の追及が挙げられる。「よど号」犯絡みでは、欧州事案のみならずユニバース・トレーディング社事案もあり、後者については30人近い拉致被害者がいるという報道もあった。これは現在の拉致被害者の政府認定を大きく変えるかもしれない事案である。拉致問題の全体像を把握するためには、「よど号」犯とその関係者に真相を語らせなければならない。

 ただ、裁判での真相究明にも限界がある。拉致被害者救出については、政府・与党の具体的行動が先ず問われるが、野党や反権力という立場の者においても、やれることが無いではない。ならば、その限りにおいて彼らにも責任はある。取調べや裁判の経過とは別に、「よど号」犯関係者の支援者、参院選において彼らと協力関係にある立候補者、そしてその支持者は、彼らに真実を語るように説得すべきである。だが、彼らの口から出てくるのはいつだって、「過去の侵略戦争」云々という拉致問題相対化言説か、「政府は拉致問題を政治利用している」云々という反権力言説かである。
posted by sok at 18:20| Comment(0) | TrackBack(1) | 日本人拉致事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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