2007年04月14日

渡辺秀子さん母子監禁・拉致事件 現在までの報道まとめ

 北海道出身で埼玉県上福岡市の主婦・渡辺秀子さん母子が監禁され、子供2人が北朝鮮に拉致されたと見られる事件について、4月7日のエントリーが長くなり、読みにくくなったので、一旦、事件の流れを短く纏めてみることにする。ソースは元エントリーとリンク集で確認して下さい。

(2007年04月07日)渡辺秀子さん母子失踪事件に関する時系列メモ
(2007年04月09日)渡辺秀子さん母子失踪事件リンク集


渡辺秀子さん失踪事件 私的まとめ

 「ユニバーストレイディング」は、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の金炳植(キム・ビョンシク)第一副議長が中心となって、1971年6月に設立した貿易会社。表向き、人材派遣会社などから募った社員約20人が金属・機械・鉱石・羊毛・肥料などの輸出入・販売業務をする一方で、同社には約10人の北朝鮮工作員が所属し、日常的に自衛隊や在日米軍の情報収集などをしていた。工作員グループは共同で生活し、他の社員と区別して「ドミトルグループ」と呼ばれていた。

 1972年頃、同社設立の中心人物である金炳植が、権力闘争に敗れて北朝鮮本国に呼び戻される。翌年6月頃には、同社の専務で金炳植の腹心であり、「ドミトルグループ」のリーダーでもあった高大基氏が、朝鮮総連の活動家に対して「共和国から召喚状がきた」と言い残して姿を消す。高氏が失踪した後、同社の女性役員・洪寿恵(日本名・木下陽子 現在59歳)が工作員グループのリーダーとなる。洪寿恵は「朝鮮労働党の工作機関の幹部に取り立てられた」と周囲に話していたという。

 同月、高氏の妻・渡辺秀子さん(北海道釧路出身で埼玉県上福岡市の主婦)は、夫の行方を探して、夫の勤務先である「ユニバース・トレイディング」社周辺を、2人の子供を連れて尋ね歩く。その際、渡辺さんは洪寿恵から「夫はもう帰らない」と告げられ、実家の北海道に帰るよう促されたという。これを受けて、渡辺さんは一旦帰郷する。

 その夏、北海道に帰省した渡辺さんは、妹の鳥海冏子さんや母・ゆきよさんに対して、「家を建てて両親と暮らしなさい」と夫から言われ1200万円の小切手を渡されたこと、数年前から夫の弟と名乗る男が渡辺さん宅に住み込むようになり、外出もせず、夜中に朝鮮語とみられるラジオ放送を聞いていたことなどを打ち明けている。鳥海さんによると、渡辺さんの結婚から数年後に「夫がスパイ」であると打ち明けられたともいう。

 また、渡辺さんは親友・小田久子さんに対して、高氏が自衛隊第5師団の幹部や旭川の自衛隊、防衛大学幹部、小樽の海上保安庁幹部、札幌の旧電電公社機械課職員らと飲食し、金銭を渡したことを話している。「私の夫、工作員なの」とも打ち明けているが、小田さんは「工作員」の意味が分からなかったという。また、小田さんは渡辺さんのノートに「洛東江」という名前と電話番号が書かれているのを見ている。「洛東江」とは、1978年に田中実さんを拉致したとされる北朝鮮工作組織の名前。

 1973年12月、渡辺さんと子供2人が行方不明になる。同月、渡辺さんから実家に電話があり、「大阪の友達の家にいる。正月には(当時住んでいた)埼玉に戻る」と伝えられる。これを最後に家族との連絡が途絶える。渡辺さん母子は、洪寿恵ら5人に東京都目黒区下目黒清水台にあるマンションに監禁される。その後の警察当局の調べによると、前月中旬に同社の工作員が欧州に派遣され、北朝鮮の在外工作拠点にて「3人を北朝鮮に連れてくるように」との指示を受けていたという。警察当局は、この時期までに母子が監禁されたとの見方を強めており、渡辺さんから実家にかけられた12月の電話は、監禁発覚を免れようとした工作グループの偽装の疑いが強いと見ている。

 1974年3月10月夜、渡辺さんから友人に電話がある。電話は「福井から」と言って途切れたが、渡辺さんの声の背後で、ぽんぽんという船のような音が聞こえたという。警察当局は友人の証言などから、渡辺さんがこの時までは生存していたとの見方を強めている。1974年4〜5月頃、洪寿恵が他人名義の旅券で羽田空港から出国。5月中旬に日本に戻って来て、渡辺さんの子供2人について「北朝鮮に連れ出す。具体的な日時などは、本国から後で連絡がある」などと配下の工作員に伝えている。

 74年6月中旬頃、子供達は男性工作員(現在54歳)によって監禁先から福井県小浜市の海岸まで車で連れ出される。警察当局の調べでは、子供2人の世話役だった女性(中尾晃の義姉 55)も、子供達と一緒に工作船で北朝鮮に渡っていた疑いが強いという。子供達は福井県小浜市の海岸から北朝鮮の清津港に拉致される。工作船の接岸場所は、1978年7月に地村保志さん夫妻が拉致された場所から約5キロの地点であった。

 1977年、洪寿恵が日本国籍を取得する。78年、「ユニバース・トレイディング」社が活動を停止。解散前の同年3月、「ドミトルグループ」の男性が日本出国前に、知人に対して「約30人を日本から北朝鮮に送り込んだ」と話している。1977年から78年にかけては、北朝鮮による日本人拉致が頻発している。77年9月9日に久米裕さん(当時52歳)、同年11月15日に横田めぐみさん(13)、78年6月に田口八重子さん(22)、同月6日に田中実さん(28)、7月7日に地村保志さん(23)とM本富貴惠さん(23)、同月31日に蓮池薫さん(20)と奥土祐木子さん(22)、8月7日市川修一さん(23)、増元るみ子さん(24)が拉致されている。

 この内、1978年6月6日に拉致された神戸市東灘区に住むラーメン屋店員・田中実さんについては、同店の店主・韓龍大が日本国内の北朝鮮工作組織「洛東江」のメンバーだった。同じく「洛東江」メンバーだった張龍雲の証言によれば、韓が北朝鮮工作員の命令を受け、田中さんを海外旅行に勧誘し、出国させたという。ウイーンで拉致され、モスクワ経由で平壌まで連行されたと見られている。渡辺秀子さんの友人が、渡辺さん失踪前に渡辺さんのノートに見た名前も「洛東江」であった。

 1979年5月6日、洪寿恵が成田空港から出国する。洪寿恵が最近まで北朝鮮で暮らしていることをうかがわせる手紙が、国内の知人に届いている。手紙には「300万円を送金してくれ。そうでないと、刑務所に入れられてしまう」とあり、振込先としてマカオにある銀行「バンコ・デルタ・アジア」の口座を指定している。この口座は、北朝鮮の偽ドル札や覚醒剤取引のマネーロンダリングに利用されている疑いがあるとして、アメリカが金融制裁で凍結していた口座の1つである。警察当局は洪寿恵が北朝鮮で生存している可能性が高いと見ている。

 1980年、欧州で松木薫さん(26)、石岡亨さん(22)が、国内では原敕晁さん(43)が拉致される。83年には有本恵子さんが欧州で拉致される。「よど号」犯・柴田泰弘の元妻・八尾恵は、2002年3月12日に東京地裁で、有本さんを騙して北朝鮮に連れていったことを証言している。

 1988年5月、東京都内に潜伏していた「よど号」ハイジャック犯・柴田泰弘が、旅券法違反容疑で兵庫県警に逮捕される。その際、柴田は中尾晃名義の旅券を所持していた。中尾晃は1970年代に北朝鮮に出国した在日朝鮮人で、その兄夫婦は東京都品川区西五反田にある貿易会社「ユニバース・トレイディング」の社員であった。これをきっかけに警察当局が同社の実態解明に乗り出す。

 1996年8月7日、朝日新聞が「妻は20年前失踪の高知県の女性/『よど号』事件 岡本容疑者」という記事を掲載する。この「高知県の女性」とは福留貴美子さんのことで、福留さんは1972〜73年にかけての5ヶ月間、「ユニバース・トレイディング」社が入居する五反田TOCビル(当時の「東京卸売りセンター」)で警備をしていた。福留さんは「モンゴルに行く」と言い残して出国。八尾恵の著書によれば、福留さんは「モンゴルに行くはずだったのに、ここ(北朝鮮)に来てしまった」と話したという。

 その2日後、東京新聞ほか各紙に「岡本夫妻、北朝鮮で死亡か?」という記事が掲載される。情報源は「よど号」グループ支援者といわれる。記事では、福留さんを岡本武の妻と認めた上で、1988年頃、2人が作業中の事故で死亡したと報じている。しかし、1980年代半ばに岡本武から日本に届いた手紙では「朝鮮で当地の女性と結婚し、幸せな生活を送っている。そっとしておいてほしい」と書かれており、自身の朝鮮名と妻の北朝鮮女性の名前も記されていたという。

 同月22日、「よど」号ハイジャック犯・田宮麿の死後にリーダーとなった小西隆裕の手紙を携えた「よど号」犯支援者が、福留さんの母・信子さん宅を訪れる。この支援者は「よど」号ハイジャック犯・田中義三の妻・水谷協子(八尾恵証言によれば有本恵子さんの教育係)の兄で、「ユニバース・トレイディング」社の元社員。手紙には「2人は80年代初め、グループと別に北朝鮮の工場か農場で働きたいと申し入れてきた。84年には別の招待所に移り、話し合いを続けたが、合意に至らなかった。86年夏、地方の農場に行くことになって子供2人を我々に預けたが、88年夏、土砂崩れで死亡したとの通知を北朝鮮側から受けた」などと説明し、訪朝を促していたという。

 1997年2月3日、産経新聞が一面で、横田めぐみさんが北朝鮮に拉致されていた可能性について実名報道を行なう。この報道により、北朝鮮による日本人拉致が問題として表面化する。同年、家族会・拉致議連・救う会が結成される。1997年10月8日、金正日が朝鮮労働党中央委員会総書記に就任。1998年8月31日、北朝鮮が日本に向けて弾道ミサイル「テポドン1号」を発射。

 2000年6月27日、「よど号」ハイジャック犯・田中義三がタイから日本へ移送され、逮捕される。2003年6月、田中に懲役12年の刑が確定する。田中はタイ・パタヤで北朝鮮製偽ドル使用容疑で逮捕・起訴されていたが、1999年6月に証拠不十分で無罪とされていた。田中は、今年1月1日に千葉県内の病院にて肝臓癌で死亡。2002年9月17日、小泉純一郎首相が北朝鮮の平壌を訪問し、金正日と会談する。金正日が拉致の事実を認める。

 2003年1月、鳥海冏子さんが容疑者不詳のまま渡辺秀子さん殺害と子供2人の国外移送目的拐取容疑で警視庁に告訴状を提出。2007年4月4日、渡辺秀子さん母子に関して、警視庁と兵庫県警が「近く国外移送目的略取容疑などで共同捜査本部を設置する方針を固めた」と報じられる。同月12日、警視庁と兵庫県警は、高敬美ちゃんと高剛ちゃんを拉致被害者と正式に認定し、国外移送目的拐取容疑で共同捜査本部を設置。


渡辺さん母子の監禁から2児の拉致に関与したと思われる者

1.女性役員の洪寿恵(日本名・木下陽子 現在59歳)
2.洪寿恵の元夫(日本国籍あり 60)
3.福井県小浜市の海岸まで2児を車で連れ出した男(59)
4.2児の世話役の女(中尾晃の義姉 55)
5.母子の監禁役の男(54)
※この内、監禁役の男を除く4人が2児の拉致に関与したと見られている。


「よど号」ハイジャック犯と「ユニバース・トレイディング」社

1.柴田泰弘
 有本恵子さんを騙して誘い出し、北朝鮮に連行した八尾恵の夫。1988年5月、東京都内潜伏中に旅券法違反容疑で兵庫県警に逮捕される。その際、在日朝鮮人・中尾晃名義の旅券を所持していた。中尾の兄夫婦は「ユニバース・トレイディング」の社員で、この中尾の義姉は渡辺秀子さんの子供2人の世話役だった。

2.田中義三
 八尾恵証言によれば、田中の妻・水谷協子は有本恵子さんの北朝鮮での教育係。水谷の兄は「ユニバース・トレイディング」の社員であり、1996年8月22日には「よど号」ハイジャック犯支援者として、田宮麿死後の後継リーダー・小西隆裕の手紙を携えて、福留貴美子さんの母・信子さん宅を訪れている。田中は、今年1月1日に千葉県内の病院にて肝臓癌で死亡。

3.岡本武
 福留貴美子さんの夫。福留さんは1972〜73年にかけての5ヶ月間、「ユニバース・トレイディング」社が入居する五反田TOCビル(当時の「東京卸売りセンター」)で警備をしていた。福留さんは「モンゴルに行く」と言い残して出国しているが、八尾恵の著書によれば、「モンゴルに行くはずだったのに、ここ(北朝鮮)に来てしまった」と話したという。1996年8月9日、岡本夫妻が北朝鮮で死亡したとの報道がなされる。同月22日、小西隆裕の手紙を携えた水谷協子の兄が、福留さんの母・信子さんを訪れている。


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posted by sok at 23:00| Comment(2) | TrackBack(1) | 日本人拉致事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おんぶに抱っこさせてもらいました。
Posted by jsdf1100411 at 2007年04月18日 09:25
 jsdf1100411さん、コメントとTBありがとうございます。

 思うところを書いてみて、それが貯まっていけば、自分の思考の変遷を確かめるのに役立ちます。拉致被害者救出に関して、一人一人に出来ることは、まだまだあると思います。お互い、やれるとこからやりましょう。
Posted by sok at 2007年04月20日 20:33
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渡辺秀子関連其の弐(他力本願)
Excerpt: と言ってもネットに集中できない状態ので、他人様へのおんぶに抱っこでお茶を濁す。つかワシもまだ精読していないのでメモがわりに
Weblog: 北朝鮮による拉致事件をワシが語る
Tracked: 2007-04-18 09:21
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