2007年01月23日

「累犯障害者」の現実 −朝日放送『ムーブ!』1月22日放送分テキスト起こし−

 2007年1月22日分放送の朝日放送『ムーブ!Wikipedia)』から、山本譲司氏出演の特集『激論スペシャル 「累犯障害者」の現実』をテキスト起こししました。発言者の表記については基本的に苗字のみとし、敬称は省略します。誤字脱字、間違いなどありましたら、御指摘よろしくお願い致します。確認の上、訂正致します。


出演者
堀江政生(Wikipedia
関根友実(Wikipedia
上田剛彦(Wikipedia

宮崎哲弥(Wikipedia
勝谷誠彦(Wikipedia
花田紀凱(Wikipedia

山本譲司(Wikipedia


2007年1月22日 ムーブ!

堀江:え、お知らせの後ですが、刑務所の中にある問題が本として出版されました。

関根:はい、それがこちらの本です。『累犯障害者』、障害を持つ人が、なぜ繰り返し罪を犯してしまうのか。今まで報じられてこなかった事実に切り込みます。

(CM)

【VTR】ナレーションは上田アナ

上田:今月17日、大阪府八尾市の歩道橋から3歳の男の子が投げ落とされるという衝撃的な事件が起こった。殺人未遂の疑いで現行犯逮捕された吉岡一郎容疑者(41歳)には、軽度の知的障害があり、6回の逮捕歴と3回の服役経験があった。なぜ、男は犯罪を繰り返したのか?

母親:人様だけには絶対に迷惑かけらたあかんって小さい時から言ってたんですけど。どこまで分かっているのかというのがねぇ…。この子殺して自分も死のうかって思って、何回思ったかわかりませんけどね。

上田:社会から見放された容疑者。そして、それをタブーとするマスコミ。今日は、罪を重ねて服役と出所を繰り返す障害者、累犯障害者の問題に警鐘を鳴らし続けている元国会議員、山本譲司さんをゲストに迎え、激論スペシャル。マスコミが絶対報じない塀の中の驚愕の現実を赤裸々に語って頂きます。

激論スペシャル 「累犯障害者」の現実

堀江:え、今のVTRの中で知的障害の「障」の字が間違っていました。

関根:失礼しました。

堀江:今日は特別ゲストに山本譲司さんをお招きしています。宜しくお願いします。

山本:宜しくお願いします。

堀江:山本さん、一言だけ先ず伺いたいんですけれども、今の八尾の事件なんですが、これ防ぐこと出来ましたか?

山本:え、100%防ぐことは出来なかったかもしれないですけれども、限りなく0に近づけ手段はあったと思います。

堀江:なるほど、その辺り詳しく伺いましょう。で、山本さんは実はこちらの本、あの、『累犯障害者』という本を去年出版されたんですが、こちらの(本の)帯にもありますように「罪を犯さねば生きられない――。マスコミが絶対に報じない驚愕の現実。」という風に書かれていますね。この本を基に現実をたっぷり語って頂きます。
山本譲司著『累犯障害者・獄の中の不条理』(新潮社)1,470円(税込)

堀江:先ずは、簡単に山本さんのプロフィールです。
【画面01】

山本譲司

菅直人氏の秘書をへて
’96年 衆院議員に初当選
’00年 政策秘書給与流用事件で
     1年6ヵ月の実刑判決を受け服役

433日間の獄中生活を「獄窓記」
として出版し、刑務所の現状を指摘。
「新潮ドキュメント賞」を受賞。

関根:はい、山本譲司さんは民主党の菅直人氏の秘書を経て、1996年、衆議院議員に初当選されました。しかし、2000年、政策秘書給与流用事件で1年6ヵ月の実刑判決を受け、服役しました。433日間の獄中生活を『獄窓記』として出版し、刑務所の現状を指摘しました。え、この本から「新潮ドキュメント賞」を受賞されています。

堀江:そして、この『累犯障害者』という本に繋がっていく訳なんですけれども。山本さん、この、先ず意味なんですが、累犯障害者ってどういうことですか。

山本:まあ、一般的に累犯と言いますとね、刑法56条に書かれております、定義付けられております、え、再犯者って意味なんですけど。まあ、ここでのタイトルは、私自身、刑務所で、彼ら罪を重ねる障害者と出会って来た経験から、まあ、どうしても罪と結び付いてしまう障害者。そんな意味で、こういうタイトルにしたんです。

堀江:え、あの、宮崎さん、あの八尾の事件が起きたときに、最初に宮崎さん、この話をされましたね。

宮崎:ええ、あの、これはまさに累犯障害者の事件だと。山本さんがおっしゃっている累犯障害者の典型的な事例であるという風に言いましたが、まあ、実際は7回でしたか、6回ですか。

堀江:6回で、(今回が)7回。

宮崎:7回目ということでしたよね。これを6回、最悪の事件を起こすまで6回やってる訳です。この累犯をどうにかすることが出来なかったのかというのが、一つ問題意識としてありますね。

堀江:刑務所の中のその累犯障害者の実態を、先ずは上田さんから説明して頂きます。

上田:先ず、障害と認定される人には大きく分けて三つあります。身体障害者、知的障害者、精神障害者、それぞれ見ていきます。
【画面02】『累犯障害者』の実態

身体障害者:目や耳、身体機能の一部に障害のある人

知的障害者:先天的または生後すぐに脳に障害を受けた人。知能指数(IQ)70もしくは75以下(自閉症やダウン症など)

精神障害者:環境やストレスによって発生。統合失調症や薬物依存症など。治療による回復が可能

上田:身体障害者は、目や耳、身体機能の一部に障害のある人。知的障害者は、先天的または生後すぐに脳に障害を受けた人。知能指数いわゆるIQ70もしくは75以下だという定義もあります。自閉症やダウン症などの一部の人も含まれていて、先日の八尾の男児投げ落とし事件の吉岡容疑者も知的障害者と認定されていました。そして、間違え易いのは、この精神障害者です。環境やストレスによって発生し、統合失調症や薬物依存症などが原因とされていて、治療による回復が可能だということで、裁判で心神喪失、つまり精神障害者だと認められると無罪となります。山本さんの本の中では、主にこの知的障害者の累犯について書かれているんですが、この知的障害者の累犯、どれくらいいるんでしょうか。
【画面03-1】『累犯障害者』の実態

【刑務所内の知的障害者】(法務省「矯正統計年報」)
新受刑者総数(04年) 3万2090人
そのうち


【画面03-2】

IQ69以下 7172人
測定不能  1687人
3割近い受刑者が知的障害者

上田:こちらは法務省のデータなんですが、刑務所内の知的障害者、2004年です。新受刑者総数、つまり2004年に刑務所に入ることになった、刑に服することになった人の総数が3万2090人なんですが、そのうち、IQ69以下が7172人、測定不能が1687人、3割近い受刑者が知的障害者と認定されるIQということになります。

【画面04-1】『累犯障害者』の実態

知的障害のある受刑者 7割以上が再入所
                10回以上服役 約2割
ある受刑者


【画面04-2】

ここまで生きてきたなかで、ここ(刑務所)が一番暮らしやすかったと思っているんだ

上田:しかも、知的障害のある受刑者7割以上が再入所、つまり服役経験が以前にある。10回以上服役している人が、およそ2割というデータです。そして、ある受刑者は「ここまで生きてきたなかで、ここ(刑務所)が一番暮らしやすかったと思っているんだ」と話したということです。

堀江:まあ、山本さん、この言葉は重いですね。

山本:はい。

堀江:どうして、こういうことおっしゃるんでしょうか。

山本:あの、私自身もですね、刑務所という所に戻るかと言われたら絶対に戻りませんよ。自由も尊厳もない所ですからね。ですから、この辺は尊厳ですね。彼ら、外の世界で尊厳があったのかと。

宮崎:尊厳が認められなかったと?

山本:いや、まあね、元々、障害者だから認められないというよりも、障害であるゆえに過酷な環境、劣悪な環境に立たされている人が非常に多い、と。まあ、したがってね、刑務所の中では誕生会もやりますしね、正月もやれば雑煮も食べられますし。いや、そういうこと一切ね、例えば、あの、30数年生きてた受刑者が、一回も自分の人生の中で無かったと、そういうことが。

宮崎:そういう家庭的な環境に包まれたことが無かった、と。

山本:そうです。ですから、尊厳でいえば、外の世界では残飯漁って生きていくしかないんです。それに尊厳があるのか。だったら、まだ刑務所の方が尊厳があるんじゃないかと。まあ、要は「ここ(刑務所)が一番暮らしやすかった」っていうのは、まあ、再犯を臭わしているんですよ。次、また刑務所で過ごしたい、と。まあ、終の住処になってるんですね。

堀江:あの、この『類型犯罪者(注:言い間違い)』という本の中でですね、特に帯の中で、マスコミは長い間タブーとしてきた。「絶対に報じない」という風に。なぜ、マスコミはタブーにしてきたのでしょうか。

山本:まあ、一つはですね、知的障害者が、あの、その障害特質ゆえに、それが犯罪動因に結び付いているんじゃないか、と。

堀江:そこを短絡的に繋げてしまう。

山本:そうそう。だから、そういう誤解と偏見が世の中に伝わる可能性がある、という建前かもしれませんけど、実際はやはり当事者団体とか、或いは、そういう知的障害者の団体からクレームが怖いんでしょうね。

花田:要するに、あの、人権派弁護士なんですよ。人権派弁護士から必ず、そういうのをやれば、ちょっと触れればですね、もうクレームが来るんですよ。

山本:ところが、それで見て見ぬフリをする、あったのになかったことにすることによって、この問題が全く顕在化せずに、だから善後策というものが福祉の場でも、或いは、法務省レベルでも全く論じられてこなかった。

宮崎:それの典型的なものが、こないだも私、この「ムーブ!」で取り上げましたけれども、レッサーパンダ帽の男の事件だった、と。

堀江:そうですね。で、実際、僕らもあの後どうなったのかということを、ちょっと知らない。でも、山本さんは、その後のことを取材されています。え、ここからいきましょう、上田さん。
【画面05】『累犯障害者』の実態

レッサーパンダ帽の男
−浅草・女子短大生刺殺事件−

上田:先ずは、レッサーパンダ帽の男が注目を浴びた浅草・女子短大生刺殺事件です。
【VTR】

上田:事件が起きたのは2001年4月30日、東京浅草の路上で白昼、男が女子短大生を刺殺するというものでした。容疑者はレッサーパンダの帽子を被り、犯行に及んだことから、世間の注目を集めました。そして、発生から10日後、容疑者は通報を受けて逮捕されました。

【画面06-1】マスコミのタブー 『レッサーパンダ帽の男』

事件発生直後 『レッサーパンダ』と呼ばれ
マスコミ各社の報道加熱
しかし、


【画面06-2】

容疑者逮捕の2日後、新聞報道がピタリと消える−

山口容疑者(当時29)のIQは49程度で知能は小学校3年生レベルの知的障害者

上田:事件発生直後、この事件は『レッサーパンダ事件』と呼ばれ、マスコミ各社の報道が過熱しました。しかし、容疑者が逮捕された2日後から、新聞報道がピタリとこの事件に関して消えてしまった訳なんです。山口、当時の容疑者のIQは49程度で、知能は小学校3年生レベルの知的障害者です。え、マスコミが報じなかった山口容疑者、一体どんな人物だったのでしょうか。
【画面07-1】マスコミのタブー 『レッサーパンダ帽の男』

山口受刑者(無期懲役で服役中)
’72年 札幌市に生まれる

小、中学校は普通校に通うが成績は悪く
学校の勤めで高等養護学校に通う


【画面07-2】

3年、母親が白血病で他界
家出を頻繁にくり返すようになる


【画面07-3】

父:知的障害者 浪費癖が激しく、山口受刑者に暴力
妹:末期がんに侵されながら家計を支える

上田:現在は無期懲役で服役中、山口受刑者となっています。山口受刑者は1972年、札幌市に生まれました。小学校、中学校は普通校に通っていたんですが成績が悪く、中学卒業後は学校の勧めで高等養護学校に通っていました。そして、高等養護学校3年のとき、最愛の母親が白血病で他界をします。この頃から家出を頻繁に繰り返すようになりました。山口受刑者の家庭環境です。父親は山口受刑者と同じく知的障害者で、浪費癖が激しく、幼少の頃から山口受刑者に対して度々暴力を振るっていました。そして、妹は末期がんに侵されながらも、こういった状況の中で家計を支えていたんです。
【画面08-1】マスコミのタブー 『レッサーパンダ帽の男』

自転車の窃盗や無銭飲食などで
3回の有罪判決を受け、2回服役

’01年 女子短大生刺殺事件

レッサーパンダの帽子については…
「寝る時も肌身離さず持っていたが
犬の帽子だと思っていた。」

包丁を被害者に向けたことについては…


【画面08-2】

「友達になりたかった」
「わいせつ目的」についても否定

上田:こんな中で山口受刑者は犯罪を繰り返すようになります。自転車の窃盗や無銭飲食などで3回の有罪判決を受け、2回服役していました。そして、2001年に出所後、女子短大生刺殺事件を起こすことになります。レッサーパンダの帽子については、「寝る時も肌身離さず持っていたが犬の帽子だと思っていた。」と話していました。また、包丁を被害者に向けたことについては「友達になりたかった」と供述していて、「わいせつ目的」についても否定しています。

堀江:え、まあ、家の中の様子なども取材されているようですけれども。

山本:はい。

堀江:こういう方だからといって罪が許される訳ではない。

山本:ええ、当然そうです。はい。

堀江:ただ、だけど、そうか、そういうことが報じられてこなかったな、という感じがしますね。

山本:いや、たぶん分かってるんですよ。

堀江:ええ。

山本:10日間、彼は逃亡してた。逃亡じゃなくて、本当は現場近くに放浪してたんですけどね。あの、その間10日間、犯人が捕まりませんから、マスコミの皆さんは大挙、北海道まで行ってね、あの、たぶん、この家の彼が容疑者だろうということで、もうメディアスクラム。10日間ね、あの家を取り囲んでいた、と。ボロボロのアパートですよ。ですから、その中で死にかけた妹さんがいたり、障害のある父親がいた。まあ、それも分かっていたはずなんですけどね。まあ、彼が、犯人である彼が高等養護学校を出てた知的障害者だと分かった途端、パーっと引くわけですよ。ですから、こういう背景も全く伝えられなかった。

 で、まあ、彼の場合はですね、あの、色々言ってますよね。「友達になりたかった」とか。あの、私も随分、裁判の傍聴しましたけど、まあ、普通で考えるとね、常識の尺度が全然違うのかとか、考えられるところがありますが。確かにね、その先ほど申し上げましたように知的障害が犯罪動因になる訳じゃない。え、どちらかというと習慣だとかルールに従順な人が多い。ただ、これは健常者が作ったルールなんですけどね。それと照らし合わして、やっぱり善悪の判断が定かじゃない。あの、コミュニケーション障害、そういうものも持ち合わせている人達ですから。だから、善悪の判断が定かじゃないから悪いことをやるという訳じゃないですよ。要は、自分を守る供述も出来ない訳ですね。

堀江:もう一つ、最近の事件で何度も服役していた容疑者の話に、ちょっといかして頂いてよいですか。

山本:はい、そうですね。
【画面09】『累犯障害者』の実態

下関駅放火事件

上田:下関駅の放火事件です。
【VTR】

上田:去年1月7日未明、JR下関駅が炎に包まれました。63年の歴史を持ち、街のシンボルとして親しまれてきた駅でしたが、あっという間に焼き尽くされました。そして、出火から3時間後、福田容疑者が逮捕されました。

【画面10-1】マスコミのタブー 『下関放火事件』

福田被告(山口地裁で公判中)
軽度の知的障害者

少年時代、父親から燃えたぎる薪を
押しつけられるなどの凄まじい虐待を受ける


【画面10-2】

福田被告:刑務所に戻りたかったから火をつけた

過去に放火11回、服役10回
ただ、本人は刑務所に戻らない方法も考えていた

上田:現在、山口地裁で公判中の福田被告となっています。軽度の知的障害者と認定されていました。少年時代は、父親から燃えたぎる薪を押しつけられるなどの凄まじい虐待を受けていて、犯行後、「刑務所に戻りたかったから火をつけた」と話しています。過去に放火を11回繰り返して、服役を10回していました。ただ、本人は刑務所に戻らないという方法も考えていたんです。
【画面11-1】マスコミのタブー 『下関放火事件』

放火の8日前…刑務所を出所
しばらく野宿生活だったが放火の半日前、
「生活保護」を申請するため区役所へ−。
「住所がないとダメ」と追い返され、
下関駅までの切符を渡された。


【画面11-2】

↑どうして火をつけてしまった?

福田被告
「店の前に置いてあった紙に火をつけて
段ボールの中に入れたらいっぱい燃えだした。
駅が燃えると思わんかったから驚いて逃げた。」


【画面11-3】

↑火をつけるんじゃなくて食い逃げとかは?

福田被告
「だめだめ、そんな悪いことできん。」

上田:放火の8日前に刑務所を出所したんですが、しばらく野宿生活だったんですが、放火の半日前、生活保護を受ける、その申請をするために区役所に向かいました。ただ、ここで「住所がないとダメ」と追い返され、下関駅までの切符を渡された訳なんです。山本さんは、この福田被告にインタビューを行なっています。その中で「どうして火をつけてしまったのか?」と聞くと、福田被告は「店の前に置いてあった紙に火をつけて、段ボールの中に入れたらいっぱい燃えだした。駅が燃えると思わんかったから驚いて逃げた。」、また山本さんが「火をつけるんじゃなくて食い逃げとかは考えなかったのか?」と聞くと、「だめだめ、そんな悪いことできん。」と答えたそうです。

堀江:これ、山本さん、すごく僕らには理解出来ない話なんですけども。山本さんは納得できないでしょうけれども。

山本:いや、あのね、あの、彼らの場合、よくあることなんですね。まあ、刷り込まれてるんですよね。まあ、彼の場合、今回11回目ですから10回も服役してるということは、1つの罪はそんなに重くないんですよね。殆どね、派出所の前でちり紙か何かを燃やして、放火未遂で捕まってる訳ですよ。刑務所に戻してくれ、と。だから、何回も行き来できるんですけど。

堀江:その程度の火を付けたら刑務所に行けるんだという風に思ってたんです。

山本:そうなんです。

堀江:なるほど。宮崎さん、その辺りが、だから、どうですかね。やっぱ、福祉の世界ですよね。

宮崎:私はね、この本で、さっきのレッサーパンダ帽の山口受刑者の件なんですけど、こういう記述があるんですよ。「不思議である。振り返ってみると福祉行政との接点を持つ機会は、山口受刑者には何度もあったんです。それは皮肉にも」、この本では山口被告になってます、「山口被告が事件を起こすたびに訪れている。」、つまり、逆に言うと、事件を起こさなければ福祉の手は届かなかった。福祉行政と接点を持つことが出来なかったということですよね。

山本:いえ、事件を起こしても持てなかった訳ですね。

宮崎:ああ、事件を起こしても、最後の事件…。

山本:事件を起こしたんだ。父親は福祉と繋がった訳ですよ。父親は知的障害者だったんです。これは50何年間全く福祉と繋がらずに生きてきた知的障害者です。こういう例、沢山ありますけどね。あの、彼の場合は全く繋がらなかった。だから、刑務所の中の処遇も調べてみましたけれども、結局、健常者と同じ扱いなんですよ。

堀江:その刑務所の中の処遇なんですけれども、実際に体験した山本さんの著書の中から、少し紹介していきましょう。
【画面12-1】『累犯障害者』の実態

一般受刑者から
「塀の内の掃き溜め」と呼ばれる
寮内工場で刑務官の仕事を補助


【画面12-2】

知的障害者、身体障害者、認知症老人など
一般懲役工場では作業できない受刑者が
隔離され、作業をしているところ

糞尿を漏らしている者、よだれを流し続けている者
ぐっすりと寝入っている者、何かにとり憑かれたように
踊りだす者などなど…『獄窓記』より

上田:山本さんは一般受刑者から「塀の内の掃き溜め」と呼ばれる寮内工場で刑務官の仕事を補助していました。で、この寮内工場なんですが、知的障害者、身体障害者、認知症老人など、一般懲役工場では作業できない受刑者が隔離され、作業をしているところなんですね。え、著書の獄窓記によりますと「糞尿を漏らしている者、よだれを流し続けている者、ぐっすりと寝入っている者、何かにとり憑かれたように踊りだす者などなど…」と紹介されています。

堀江:はい、まあ、あの、その方達を世話するのが山本さんの服役作業ですね。

山本:ええ、はい。

堀江:え、で、これはどういう風に思われましたか?この生活をしながら。

山本:え、私はね、12年間くらい地方議員、国会議員やってましたけど、福祉のこと尤もらしく論じてましたけど、全く現実が見えてなかったな、と。本当に情けなく思いましたよ。で、彼らね、ここでね、結局、その、安心して暮らしている訳ですよ。あの、非常に居心地良く暮らしちゃっている訳です。但し…。

堀江:外にいるよりずっと楽なんですね。

山本:但し、但し、ま、彼らを隔離しているだけで、福祉的な視点、或いは医療的な視点で集めている訳じゃない。したがって、あの、彼らの特質にあった処遇プログラムというものは全く用意されていない。薬漬けだとか、そういう形で隔離しているだけ。

堀江:(フリップを出して)ここにコメントを書いてもらって

山本:そうですね、ですからね。

堀江:塀の中の現実です。
【フリップ1】激論SP 塀の中の現実

刑務所は
行き場を失った
障害者たちを
保護する施設

山本:私は、彼らは最近の厳罰化の流れの中で、障害者であろうと高齢者であろうと実刑判決だと。まあ、そういう流れかと思ってたんですが、1年2ヶ月間、彼らと一緒に暮らしてきた中での感想は、要は彼らは行き場所が無かった。したがって、とりあえず、福祉施設は断りますよ。最近、特に、その、断ります。契約の時代ということになって。ところが、唯一、彼らを拒まないのは刑務所だけなんです。まあ、したがって、刑務所の中で、とりあえず3食食わして、保護して。

堀江:保護する施設なんだ、と。

山本:とりあえず保護してよ、と。まあ、そういうところでした。

堀江:本当に受入先の無いような…

勝谷:さっきの下関事件なんかは接点あった訳ですよ。福祉の窓口へ行ってる訳ですよ。

堀江:そうですね。

勝谷:ところが、住所が無いからということで。

花田:切符を持って帰した

勝谷:切符を渡して帰す。これは要するに、勝手にしろと言われているようなもんです。彼にしてみればね。

堀江:門前払いですね。

関根:その受入先について見て頂きたいんですが。触法障害者、いわゆる法を犯してしまった障害者の受け入れ先です。
【フリップ2】触法障害者の受け入れ先

’04年の出所者総数 約3万人
社会福祉施設が受け入れ 24人
「罪を犯す恐れがある障害者を
受け入れても、ただ厄介なだけ」

更生保護施設(全国に101ヵ所)
身元引受人がいない受刑者を受け入れる
福祉的スキルがないため
障害者は絶対受け入れない

関根:大きく二つ。社会福祉施設、更生保護施設を見て頂きたいと思います。2004年の出所者全体、約3万人います。え、山本さんの話では、この中の相当な割合で触法障害者がいると考えられているんですが、うち社会福祉施設が受け入れた人数が、たったの24人でした。え、「罪を犯す恐れがある障害者を受け入れても、ただ厄介なだけ」と話しているということです。そして、更生保護施設です。全国に101ヵ所あるんですが、身元引受人がいない受刑者を受け入れる、そういう施設なんですけれども、福祉的スキルがないために障害者は絶対に受け入れないとしています。

堀江:本当に受け入れる施設が無いという現実が…。

山本:そうなんです。いや、受け入れる施設はあるんですよ。

堀江:ある。

山本:どこかというと、累犯刑務所です。

堀江:結局、そこに行き着く、と。

山本:だから、私が行ったのは初犯刑務所です。で、実は一ヵ月前に、あの、東京の府中刑務所、これ、日本最大の累犯刑務所ですけど、ここに行ってきましたけれども。いや、あそこは極道の人達が中心にいるのかと思ってたら、実は違うんですよ。一番手を焼いているのは、やっぱり累犯障害者、高齢者。累犯障害者、障害者は、あの中で58%。日本人全受刑者の内58%いるんですよ。あの中に。そこで年間、300万の税金を使っている訳です。

宮崎:結局ね、累犯刑務所が、累犯者の刑務所が日本の福祉の、シャバの福祉の、この貧困さっていうのを全部受け入れてるって形になってるんですよね。

山本:そうですね。

宮崎:で、一番最初の問いに戻るんだ。でも、とはいえ、要するに被害者がいる訳です。レッサーパンダ帽の事件にしろ、この間の投げ落としの事件にしろ。これ、防ぐためにどうすればいい?

山本:えっとですね、これ、まあ、実は私、法務省の中でもそういう研究班立ち上げて、或いは厚生労働省も最近この問題に目を向け始めてますけれども、要はね、これ、今回の問題も福祉だけの問題じゃない、刑務所だけの責任じゃない。実は、福祉と刑務所が連携をやってる例ってのは、諸外国に沢山あるんですよ。例えば、日本の場合、39条で弾いちゃって、そのね、心身喪失や何とかで事前にどこか隔離するというような政策しかないんですけど、実は、まあ、障害者だから罰するな、じゃなくて、障害者に、彼らの刑務所処遇に資する裁判をちゃんとやる訳ですよね。外国の場合ね。

堀江:罰した後、どうするか。

山本:そう、そうです。そうなると、社会復帰、或いは贖罪に資する、そこに結び付く刑務所内処遇をやるんですよ。この刑務所内処遇には、大体、オーストラリアとかアメリカ、ヨーロッパの凄い国、割と厚生労働省、日本でいう厚生労働省がここの処遇に携わるんですね。

宮崎:医療の専門家が入ってくる。

山本:医療と福祉の専門家、臨床心理士とかね、そういう人達が。ですから、福祉に繋がり易い。今の日本の場合は、全くそういう福祉的視点が無い。薬漬け。その中で、ただでさえ先天的にコミュニケーション障害、あの、折り合いを付けることが出来ない、人とね、そういう障害を持ってる人が、ますます非人間的、非社会的な人間になって、社会に放流して…。

宮崎:それで出して、また再犯を犯してしまう、と。

勝谷:おそらくメディアの現場も精神障害、知的障害の区別さえ殆ど知らずに、何となく全体がやばいもの、やばいって言いますね、僕ら。そういう業界ではね。

山本:ええ、だから…。

勝谷:触っちゃいけないものだと思って。あの、大阪で最近出てきた同和利権の問題でもそうだけど、精査することなく何となく蓋をした。そういうことですよね。

堀江:あの、徐々に刑務所が変わりつつある、これに希望が持てんだろうか。ちょっと、この話をしましょう。
【画面13】激論SP 変わりゆく刑務所

’05年5月 「監獄法」を全面改正した
        「受刑者処遇法が成立」

刑務作業中心
    ↓
矯正教育を重視する姿勢へ転換。
受刑者に罪種別更生プログラムの
受講を義務づけた

上田:はい、2005年の5月に「監獄法」を全面改正した「受刑者処遇法」が成立しました。これにより、これまでは刑務作業中心だったのが、矯正教育を重視する姿勢へと転換した訳です。受刑者に罪種別更生プログラムの受講を義務づけるということになりました。
【画面14-1】激論SP 変わりゆく刑務所

PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)方式の刑務所
半官半民の刑務所で、運営者として多くの民間人が加わる。今年4月、
山口県で第一号が運営開始予定


【画面14-2】

島根あさひ社会復帰促進センター(来年10月)

精神障害者、知的障害者、身体障害者の
専用ユニットを設けて、刑務作業ではなく、
福祉的スキルを持った専門家による
生活訓練を受ける。

上田:また、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)方式の刑務所も出来始めます。半官半民の刑務所で、運営者として多くの民間人が加わります。今年の4月、山口県で第一号が運営開始の予定となっています。そして、山本さんが注目しているのは、来年の10月に出来ます島根あさひ社会復帰促進センターという場所なんですが、ここでは精神障害者、知的障害者、身体障害者の専用ユニットを設けて、刑務作業ではなく、福祉的スキルを持った専門家による生活訓練を受けることが出来るということです。

山本:いや、私が注目してたんですけども、実はそれよりも前倒しで、実は今年の10月オープンで、この関西では加古川市に播磨社会復帰促進センターというものがありまして、ここは身体はないですね、知的障害者120名の入所…。

堀江:今年の10月?

山本:今年の10月。と同時に、まあ、私が、あの、収監されてた、服役していた黒羽刑務所というところの近くにある、栃木県に喜連川社会復帰センター、ここは500人の障害者専用ユニットを作る、と。まあ、それには刑務官が携わる訳じゃなくて、民間の臨床心理士だとかそういう人達が、まあ、諸外国の例を学びながら、そういうその心理学的アプローチをしていく、と。そういうプログラムが導入されます。はい。

勝谷:それ、だから、あの、我々とね、物の考え方、倫理なんかの敷居の高さが違う部分がある訳じゃないですか。それを、だけど、覚えてもらったら治るものなんですか。

山本:治ります。あの、先ほどその治療によって回復、精神障害者の方がそうだと言われてますけれども、知的障害者、或いは自閉症の人でもトレーニングによって改善します。

堀江:結局、そうやって、あの、改善する可能性があるっていうことを、我々は解らないまま蓋をし続けてきてしまったということが、まあ、色々な悲劇を生んでしまった、ということです。

花田:でもね、山本さんの本を読んで、僕つくづく思ったのはね、ジャーナリズムの怠慢なんだよね。で、せいぜいね、週刊誌ぐらいしか報じない訳。で、週刊誌がそういうことを報じるとね、もう雨あられと非難を受ける訳ですよ。週刊新潮とかね。だからね、ジャーナリズムの怠慢だね。新聞もきちっとそういうこと書かなきゃいけない、本当は。

堀江:怠慢なジャーナリズムの尻叩いて、山本さん、また東京の局でもこういうこと話して下さい。

山本:そうですね、はい。

堀江:どうも、わざわざ大阪まで、ありがとうございました。

関根:本当にありがとうございました。



【2007年01月25日23:00追記】
 名塚さんの日記で取り上げて頂きました。ありがとうございました。こうして一人一人がネット上で話題にすることで、累犯障害者問題への関心が高まればと思います。

(2007年01月24日)あんた何様?日記:累犯障害者
posted by sok at 05:00| Comment(11) | TrackBack(1) | テキスト起こし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
書き起こしありがとうございます。ムーブ!を見れない者として助かります。
重い問題ですね!じっくり読ませていただきました。
Posted by kata at 2007年01月23日 10:39
 kataさん、コメントありがとうございます。

 テキスト起こしは大変な割に地味なエントリーになるので、読み手の反応があると嬉しいです。番組中で取り上げられている山本譲司さんの著書『獄窓記』と『累犯障害者』も興味深い内容ですよ。
Posted by sok at 2007年01月24日 00:11
はじめまして。
獄窓記は読んでいて、八尾市の事件で山本さんのことを思いだしていました。
累犯障害者も必ず読みます。
ところで先日映画「それでもボクはやっていない」を見て、日本の司法制度に
暗澹たる思いになりましたが、主人公の彼はまだマシな方だと、この記事を読んで
思い直しました。健常者で、仲間もいて、弁護士や警察や裁判官と通常の会話や
自己弁護もできるんですから。
いや、映画を見ているときは、とても気の毒だと思いましたけど。
考えさせられる書き起こしでした。ありがとうございました。
Posted by こま at 2007年01月25日 03:40
 こまさん、コメントありがとうございます。


周防正行監督最新作『それでもボクはやってない』公式サイト
http://www.soreboku.jp/index.html

 周防正行監督の映画「それでもボクはやってない」は、現行司法制度の問題点として指摘されるところがよく纏まっていて、法学入門としても優れた映画だと思いました。私は試写会で見たのですが、上映後、他の観客の反応に「電車内では痴漢と間違われないように気をつけよう」という声が多く、ネット上でも痴漢冤罪に限定した論評が多々あり、なぜ、冤罪を痴漢冤罪だけに限定して考えるのだろうかと、その点が少し気になりました。最近の冤罪事例としては、先日の富山県警の一件もあるのですから。

(2007年01月21日)朝日:逮捕時「証拠ある」 富山の無実男性の兄に県警
http://www.asahi.com/national/update/0121/TKY200701200320.html

 他にも、下記記事のような問題もありますね。

(2007年01月18日)朝日:国選弁護に「空白期間」 控訴し高裁に記録着くまで
http://www.asahi.com/national/update/0117/TKY200701170447.html
Posted by sok at 2007年01月25日 21:59
自分の兄弟に身体障害者がおりますので、この現実は人事ではありません。
障害者はひとりでは生きていけません。 幸運にも家族、知人に恵まれた場合にはよいのですが、そうでなければこの現実が待っていることになります。弱者の彼らを国として生きる権利について本気で考えてあげなければいけないとおもいます。
Posted by こはく at 2007年03月05日 14:23
 こはくさん、コメントありがとうございます。

 福祉行政が充分にその役割を果たせていないために、刑務所行政が変容し、再犯によって刑事政策が厳罰化に向かうとなると、これは障害者にとっても非障害者にとっても好ましくないことです。


>弱者の彼らを国として生きる権利について本気で考えてあげなければいけないとおもいます。

 その通りだと思います。個人的には、弱者という面より権利者という面で考えられないものかとも思います。弱者という言葉については、これは対比すべき社会があってのことですが、どうもネット上ではタブーとされるものに挑戦することが好まれる傾向があるようで、一旦、弱者を無謬の存在に見立ててから、そのあるべき姿(脳内の仮想の弱者)に反するとして殊更に叩く言説も目にします。給付やインフラの整備だけでなく、権利者教育もまた必要と思います。
Posted by sok at 2007年03月07日 23:59
テキスト起こしありがとうございます。
精神障害と知的障害の区別がわかりました。刑務所なのに復帰センターとは生ぬるいのでは、と思ってましたが、累犯障害の側面から考える必要性も知りました。
差別することなく、しかし危険性にも目をつぶることなく、社会が事実を知り、どのようにすればよいか考える、よい機会を提供していただいたと思います。
Posted by のあぱぱ at 2008年04月25日 17:29
 のあぱぱさん、コメントありがとうございます。

 刑務所行政と知的障害者の問題に関しては、まだまだ社会的に関心が高いとはいえない問題であり、拙エントリーが幾らか参考になったのであれば、テキスト起こしをした甲斐がありました。ありがとうございます。機会があれば下記エントリーも御一読頂ければ、と思います。

クローズアップ現代『もう刑務所には戻さない 〜動き出す知的障害者支援〜』
http://sok-sok.seesaa.net/article/54124903.html
Posted by sok at 2008年04月27日 20:17
興味深い内容でした。
放送を見たかったなぁ・・・。
もっともっとこういう内容の議論が進まないとダメですね!
Posted by ななし at 2008年12月17日 13:57
 ななしさん、コメントありがとうございます。すっかり返信が遅くなりました。申し訳ありません。

 最近では、この方面を扱った書籍も幾つか出ており(本文中の山本譲司氏だけでなく佐藤幹夫の著作も興味深かったです)、この放送の当時よりも、情報にはアクセスし易くなっていて、議論の下地は整いつつあると思います。
Posted by sok at 2009年01月27日 01:00
 刑務所行政とは直接関係ないですが(犯罪に巻き込まれる事例もあるので無関係ともいえませんが)、知的障害者関係で最近気になった記事を二つリンクしておきます。興味のある方はどうぞ。

Web屋のネタ帳:都議会議員の田代ひろしと古賀俊昭と土屋たかゆきは、○○まみれの手で顔をヌルってされる現場で半年ほどバイトしてみるべきだろう
http://neta.ywcafe.net/000964.html

荻上式BLOG:七生養護学校の件について
http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20090317/p1
Posted by sok at 2009年03月18日 00:58
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東金女児遺棄事件のこと、累犯障害者のこと、裁判員制度のこと
Excerpt:  連日報道されている東金女児遺棄事件から関連したことをいろいろ書く。 この事件が起こったこと自体、「あぁ、またか」という感想だったと思う。被害にあわれたご家族のことを思うと大変心無い言い方かもしれない..
Weblog: 日和見日記
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