2006年09月16日

竹中平蔵氏の議員辞職に対する評価

 昨日、竹中平蔵氏が議員辞職する意向を発表した。小泉首相という後ろ盾を失うと共に議員を辞職するというのは、范雎のような見事な引き際だと思う。しかし、そう情緒的に評価するだけで終えてよいものかという思いもある。情緒的な評価は後世の史家に任せて、現代に生きる者は、先ずは理によって評価を為すべきではないか。我々、国民の生活に関わることなのだから。

 今回の竹中氏の辞職発表は、大臣辞職ではなく議員辞職である。先の参院選では竹中氏の知名度が自民党の集票に貢献したが、そういう選挙対策的評価はともかく、6年ある任期の4年を残して辞任することに目を瞑ることは、選挙制度と議会制民主主義への軽視に繋がる。立候補時の竹中氏自身の発言とも矛盾し、投票した選挙民を欺く結果となった。政治家の出処進退と説明責任が問われる出来事である。


(2004年06月22日)日経2004年参議院選挙特集:竹中氏「当選したら任期は全う」
 自民党公認で参院選比例代表からの立候補を決めた竹中平蔵経済財政・金融担当相は22日の記者会見で「(任期の)途中で辞めることはあり得ない」と言明、当選した場合には仮に閣僚を退任しても任期満了まで務める決意を表明した。出馬の理由については「国会議員という重い立場で汗を流し、改革をさらに強く進めたい。たたかれても、たたかれても改革ということだ」と強調した。


 自民党総裁選は安倍晋三官房長官でほぼ決まり、安倍氏が新首相になった場合、憲法改正と教育改革と再チャレンジ政策に重点を置くという。しかし、基本的には小泉首相の構造改革路線を引き継ぐだろう。小泉内閣時代に官房長官職に就いていたわけだから、急な路線変更は主張の一貫性に関わる。そうであるならば、竹中氏にもまだやるべきことはある。竹中氏は、よく小泉首相の楯となり、批判の矢面に立っていたとは思うが、議員辞職は任期を終えてからにすべきだった。

 “物語”としては、自身を登用してくれた宰相の退任と共に自らも役職を辞することは、潔いことだと思う。議員の立場に恋々としない立派な態度だといえる。しかし、構造改革とは小泉首相の任期で終わりの政策だろうか。この5年半の間、小泉首相について識者が語る際に「改革の道筋を付けた」というフレーズをよく耳にしたが、改革というのは「道筋」を付けたら止めるものなのだろう。

 拉致問題解決に一歩を踏み出すことに成功した小泉首相を私は支持している。けれど、竹中氏の出処進退に関しては“物語”としての評価はともかく、政治を日常生活の延長にあるものと捉えた場合には評価できない。小泉首相、小泉内閣に関することだから何でも評価するというのではなく、是是非非での評価が必要だと思う。


ローマ教皇ベネディクト16世の「イスラム=邪悪」発言

 先日、ローマ教皇ベネディクト16世のレーゲンスブルク大学で行った講演が、イスラム世界への侮辱ということで波紋を呼んだ。宗教対立を煽る発言としてネット上でも批判が優勢のようであった。

(2006年09月16日)時事通信:イスラムは「邪悪」=ローマ法王発言に怒り広がる
(2006年09月16日)痛いニュース(ノ∀`):イスラムは「邪悪」 ローマ法王の発言にイスラム諸国の怒り広がる

 ただ、どうもイスラム世界の反応は誤解によるものではないかということで、ネット上で検証が為されている。問題の箇所はベネディクト16世のオリジナルではなく、1391年にビザンツ皇帝とペルシャ人のイスラム学者との対話からの引用で、これを通信社が曲解したものが世界に配信されたということらしい。下記の冷静な検証は、読み物として興味深かった。

(2006年09月15日)eirene:ローマ教皇ベネディクト16世に、イスラム諸国が抗議している件
(2006年09月15日)Where Sweetness and Light Failed:Violence is Incompatible
(2006年09月16日)eirene:ローマ教皇ベネディクト16世・レーゲンスブルク大学での講演(2006_9_12)
(2006年09月16日)kom’s log:誤謬
(2006年09月16日)ノムさんの時事短評:ローマ教皇のイスラム発言

ベネディクト16世の発言全文はこちら


【09月18日追記】
 ローマ法王庁が謝罪声明を発表し、ローマ法王も謝罪したものの、イスラム側の怒りは収まらず。ソマリアでは修道女と護衛の男性が射殺される事件が発生。但し、ソマリアは未だ内戦状態で今回の射殺事件と教皇発言の因果関係は不明。

(2006年09月17日)読売:ローマ法王庁、ベネディクト16世発言で謝罪声明
(2006年09月17日)読売:イスラム教「侮辱」発言、法王自ら謝罪
(2006年09月17日)読売:法王の謝罪「不十分」、ムスリム同胞団が発言撤回要求
(2006年09月17日)毎日:法王発言:ソマリアで修道女ら2人射殺 背景に聖戦批判か

(2006年09月16日)あんとに庵◆備忘録:ベネディクト16世の暴走報道
(2006年09月17日)園丁日記:疑問があります。
(2006年09月18日)eirene:ローマ教皇・ベネディクト16世の講演記録を読んでみた


【追記:09月30日18時40頃】

 今更ながらメモ。竹中平蔵氏の辞職に関して批判した衆議院議員・河野太郎氏のblogが小炎上中。河野氏の文章には「ふざけるんじゃねえ!!」「なにをぬかしやがる。」「有権者をなめんじゃねえ。」と三度も大人気ない言葉が使われていて、その点に批判が向けられている。しかし、そのことだけで選挙時の約束に反して議員辞職した竹中氏の責任が有耶無耶にできるものではない。

 また、これらの発言は、河野氏なりに問題点を指摘することとセットで述べられており、辞職行為に対する批判の範囲内といえる。人格攻撃でもなければ、差別的表現でもない。誹謗中傷にも当たらない。竹中氏の有権者との約束を反故にした行為は、河野氏の発言の大人気ない点だけを理由に黙認されるべきものではない。河野親子の普段の言動とは分けて考えた方がいい。

(2006年09月15日)衆議院議員 河野太郎発行メルマガ「ごまめの歯ぎしり」ブログ版:ふざけるんじゃねえ
posted by sok at 23:59| Comment(2) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
竹中大臣が「自分の役目は終った」として辞任を表明した。
でも竹中大臣は以前から「構造改革が終った」とは云っていない。
むしろ「金融システム救済は前座であって、正念場は産業再生」と云って来た。
今の不況は「ハイテク革命」でコップの中の中産階級の書を区域が壊滅した為です。
「赤字国債に依る公共工事が唯一の地場産業」などと云う虚構で支えて来た。小泉竹中路線でその蛇口を閉めれば今日の「地方の経済破局、生活保護以下の収入しかない下流社会の大発生」は当然でしょう。
その対策はネット上でオンリーワンヒットし、反論のない「技術立国への構造改革」しか有りません。
だから文科系専科の竹中大臣は辞任を表明したのでしょう。ですからこれから必要なのは、ドイツや中国の様な「技系主導政治」への政権交替です。
安部候補の筆頭顧問岡崎久彦先生は、テレビで「日本は日英同盟の時代が最も良い時代で有った。英国のアングロサクソンの知性に従った方が良い」と云われています。その英国の上院は「貴族院」です。だから日本も技系首相に加え明治時代に英国から学んだ貴族院の復活が急務です。ソルジェニーツィンも云っている。しかし日本人は明治維新でも欧米先進国のシステムを日本式にアレンジして取り込んできた。ですから貴族院も「知財長者」に依る「ハイテク貴族院」にするのです。
Posted by 岡田元浩 at 2006年09月19日 19:22
 岡田元浩さん、コメントありがとうございます。

 技術立国という点には賛同しますが、そのことと竹中平蔵氏が国務大臣職を辞するに留まらず国会議員まで辞したことに如何なる関連があるのか私には解りませんでした。竹中氏が文科系専科であろうとなかろうと、任期の途中で議員辞職することの問題とは関係がないように思います。「ハイテク貴族院」に関しては、国務大臣として民間から登用したり、諮問会議・有識者会議といった形で対応するのではなく、敢えて「貴族院」という形で行う意義がよく解りませんでした。
Posted by sok at 2006年09月21日 21:29
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