2006年07月28日

制裁措置の緩急について

 先日の北朝鮮ミサイル発射問題に関して、当初、自分の思考の及ばなかった点について簡単に纏めておきます。

 先ず、制裁措置としての万景峰号入港禁止措置について。当初、6ヶ月という期限付きであることに対して「生ぬるい」と感じました。しかし、北朝鮮側の態度に変化がないにもかかわらず入港禁止措置を解除すれば、国内世論の反発は必至で、かといって、北朝鮮側にも面子があり、簡単に態度を改めるとは考えにくいです。経済制裁は発動だけでなく解除の判断も難しいことを考えると、北朝鮮の対応を見ながら6ヶ月ごとに審査する方が、制裁解除だけでなく制裁延長も対北カードになるので、運用に柔軟性が残ります。


○無期限の万景峰号入港禁止措置
 →北朝鮮の態度が軟化した場合(例えば六カ国協議復帰)、制裁解除。
 →北朝鮮の態度が変化しないか悪化した場合、入港禁止措置継続。
○期限付の万景峰号入港禁止措置
 →北朝鮮の態度が軟化した場合(例えば六カ国協議復帰)、制裁解除。
 →北朝鮮の態度が変化しないか悪化した場合、入港禁止措置6ヶ月延長。

 但し、これは、6ヶ月経って日本人の警戒心が薄れた頃に、状況に関わり無く解除される可能性がないことが前提です。安倍晋三氏と麻生太郎氏が要職にいる現在だからこそ賢明な判断だと思えますが、田中眞紀子氏や川口順子氏が外相の頃であれば、野中広務氏が国会議員として現役の頃であれば、当然反対です。


 次に、特定船舶入港禁止法が発動する一方で新潟西港沖合に停泊していた万景峰号を入港させ、人道的な配慮から、修学旅行生209人を下船させたことについて。拉致問題という重大な人権侵害を国際社会に訴えていく以上、対北朝鮮との関係で日本国が人権・人道を重んじる国家であることは重要です。

 7月5日付の朝日記事「万景峰号の入港を一時許可 生徒ら下船のため人道的配慮」によれば、『雑貨など約60トンの貨物の運び出しは認められなかった。船は約2時間後、乗客や新たな貨物を乗せずに出港した。』とのことなので、現在の情報の限りでは、この入港を認めたことで直ちに北朝鮮を利することにはなりません。人道的配慮(入港許可)と経済制裁(入港禁止)を比較した場合、この一隻に限り、貨物の出入を認めないという条件であれば、国民感情として許容できる範囲内だと思います。

 尤も、これは「カワセミの世界情勢ブログ」さんの下記記事を読んで気付かされたことであり、当初はこの措置に懐疑的でした。そこまで考えが及びませんでした。

(2006年07月05日)カワセミの世界情勢ブログ:北朝鮮ミサイル実験に関する所感
 しかしながら日本の立場ではそうそう気楽なことも言っていられない。今に始まった事ではないが、この北朝鮮問題、常に日本の立場が微妙である。ここで激しいリアクションを起こすと「北朝鮮すら根本的にはやっていない」国際秩序の無法な紊乱者と見られる。これは国際社会に対する影響力が大きい以上、そういうものだろ甘受せざるを得ない。これはイスラエルの立場が大きく参考になる。当然の自衛すら時に悪意を持って報道されるのだ。よほどの自制心をもって対応しないと術中にはまると考えておくべきであろう。今回に関して言えば、例えば万景峰号の入港禁止などの経済制裁を開始しながら人道的措置で学生を下船させるというような判断は正しく、その種の人道的原則は手堅く継続するべきということだ。


 カワセミさんの考え方では、下記記事コメント欄でのやりとりも参考になりました。北朝鮮の核開発問題を考える時、ついクリントン政権の対応を理由にアメリカに批判的になりがちですが、そこに考えが留まることは国際情勢を見る際に妥当な考え方なのかどうか。国内左派や親中アメリカ人が何か言った際の反論としては有効かもしれませんが、基本的には過去の過ちを繰り返さないための失敗例として参考にするに留めておいた方が、柔軟な思考ができると思います。

(2006年06月17日)カワセミの世界情勢ブログ:日本の北朝鮮人権法案に関する個人的メモ
 後段の議論に関しては少し気になることもあります。概して外交や安全保障は、長期的に変化の少ない戦略的な条件に関わることに関しては、歴史を長い目で見る必要があるでしょう。しかし政策は短期間で変わります。例えば今の中東などは、敵と味方の入れ替わりは月単位で変わりかねないこともあります。その時その時で手を打たねばならない課題が多いのです。その意味でイラン・イラク戦争時にフセインを支援したのがまずい、などという報道もありますが浮世離れもいいところでしょう。まぁ、米国でも実務家でなく学者肌の人はそう言ったりするのですが。これに関しては戦争終了後の措置がまずかったと主張すべきです。米国を批判するなら、そういう各地域の現状と比較して議論するべきと思います。事実日本や西欧のような政治的に安定した地域とは長い同盟が継続しています。

 北朝鮮の場合について話すとすれば、曲者相手に様々な政策で試行錯誤するのは当然でしょう。米国も10年以上前の話をされても困るというところでしょうか。その試行錯誤を日本も共にやってきたと胸を張れるなら堂々反論しても良いと思いますが。もっとも、日本に対する期待値は幸か不幸か元々低めなのでごちゃごちゃ言ってこないとは思います。

Posted by カワセミ at 2006年07月05日 19:43


 以上、一見、弱腰に見える対応についても、それなりの意義があり、選択肢として検討する材料になればと思い、書き出しました。北朝鮮ミサイル発射問題および国連安保理決議を巡る外交は、日和見や問題の先送り、或いは倒閣運動という手段が目的化するような事態にさえ注意できれば、可能な限りあらゆる選択肢を最初から排除せずに検討することが、日本の将来を考える上で建設的であると考えさせられた一件でした。
posted by sok at 06:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 核・ミサイル問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
時々拝見させて頂いてます。
私は法律的な事は疎いものですから
こういう風に筋道立てて書いてくださって
下さっていると大変有難いです。
これからもお忙しいでしょうけど
更新を楽しみにしています。
Posted by ぽんきち at 2006年08月05日 12:37
 ぽんきち様、コメントありがとうございます。レスが遅れまして申し訳ありません。書きたいこと、考えたいことは色々あるのですが、7月中旬頃から諸事忙しく、思考が中々纏められずに、Blog開設から程なくして更新が遅滞しております。

 今後は、更新順序は分かりませんが、以下の事柄について考えを纏められたら、と思っています。

・安倍晋三氏の著書「美しい国へ」の感想
・麻生太郎氏の靖国神社の特殊法人化について
・手嶋龍一氏の著書「ウルトラダラー」の感想
・北朝鮮の耀徳政治犯強制収容所について
・故・金丸信氏と韓国の太陽政策について
・西村眞悟氏の弁護士法違反事件について
・ガッツ石松氏の高潔さについて(例の疑惑判定の関連です)

 勿論、基本的には拉致問題についてのblogだと思っているので、日本人拉致問題についても書いていく予定です。

 法律については初歩的なことしか知りませんが、分かる範囲で初歩的な疑問点を押さえていきたいと思います。法律に関心がありましたら憲法・民法・刑法の基本書をあたってみることをオススメします。

 今後とも宜しく。
Posted by sok at 2006年08月09日 23:48
 対北経済制裁の延長に関する報道あり。以下に転載する。


(2007年04月05日)読売:対北制裁を半年延長、13日期限切れ前に閣議決定へ
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070406i401.htm
 政府は5日、北朝鮮の昨年10月の核実験を受けた日本独自の制裁措置を、半年間延長する方針を決めた。

 13日に期限切れを迎え、法律に基づく延長手続きが必要な北朝鮮船舶の入港と北朝鮮からの輸入の全面禁止は、10日の閣議で延長を決定する予定だ。

 北朝鮮国籍保有者の原則入国禁止も継続される。6か国協議で核放棄に向けた進展がなく、拉致問題でも誠意ある対応が示されないため、制裁の延長が必要と判断した。

 政府は、昨年7月の北朝鮮の弾道ミサイル発射後、貨客船「万景峰号」の半年間の入港禁止や北朝鮮当局職員の入国の原則禁止などを決定。10月9日の核実験発表後には、この制裁を強化する形で船舶全体の入港禁止などを決めた。入港・輸入の全面禁止は同13日に閣議決定し、14日に半年の期限付きで発動していた。

 政府は、国連安全保障理事会の決議に基づいて実施している、北朝鮮関係者への資金移転禁止や「ぜいたく品」の輸出禁止の措置も継続する方針だ。
(2007年4月6日3時5分 読売新聞)
Posted by sok at 2007年04月07日 22:39
『北朝鮮と台湾の関係』 核廃棄物

核開発などで何かと話題に上る北朝鮮と台湾の以外な関係をまとめてみましたので
ご参考まで。

http://www.taiwanembassy.org/ct.asp?xItem=62266&ctNode=3591&mp=202&nowPage=83&pagesize=50

http://74.125.155.132/search?q=cache:P-rMjD2p90gJ:www.taiwanembassy.org/ct.asp%3FxItem%3D62266%26ctNode%3D3591%26mp%3D202%26nowPage%3D83%26pagesize%3D50+%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E5%85%AC%E5%8F%B8%E3%80%80%E5%8C%97%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E3%80%80%E3%80%80%E9%99%B3%E6%B0%B4%E6%89%81%E7%B7%8F%E7%B5%B1+%E4%B8%AD%E8%8F%AF%E9%80%B1%E5%A0%B1%E3%80%801970%E5%8F%B7%E3%80%802000.9.14&cd=1&hl=ja&ct=clnk&gl=jp

 台湾週報
 中華週報1970号(2000.9.14)

  陳水扁総統第二回記者会見全文
  七月三十一日(総統府大礼堂にて) 

  〔質疑応答〕

  問:最近、台湾電力公司は北朝鮮に低濃度の核廃棄物処理施設を設立すると発表した。
  旧政権はこうした計画を一つの通常の商業取引と見なしていた。
  新政権はこのような計画を新たに認知するのだろうか。あるいは別の新たな方法があり、
  また第四原発を廃止しないのなら、
  新政権は他に前向きな方法を持っているのだろうか(ドイツ通信・アントイ)。

  《台北『中国時報』8月26・27日》

   著作権:行政院新聞局


 それ以外の情報は、
  http://academy6.2ch.net/test/read.cgi/history2/1190982455/
   ミャンマー情勢
    13.〜 15.
Posted by おなか一杯 at 2009年07月10日 14:59
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