2006年07月19日

拉致問題解決に対する立ち位置

拉致問題解決に対する立ち位置・主張を伝える為の 10 個の質問

 今さらながらこの質問に答えてみる。

Q1.拉致被害者家族会が北朝鮮への経済制裁を訴える事に違和感を感じる。

1. とても違和感を感じる。
2. 違和感を感じない事も無いが、心情は理解出来る。
3. この様な主張を行うのはある意味当たり前である。
4. 拉致を解決できず、(経済)制裁が出来ないのは、私たちの力が足りないからである。申し訳ないと思う。
5. その他。


A1.2番。北朝鮮による国家犯罪が確認されていて、実行犯や責任者の処罰も確認されておらず、生存に関する情報の提供においても真摯な対応が見られない状況が続いているのであるから、拉致被害者家族会が経済制裁を求めるのは当然のこと(3番)ではあるが、時々、手段であるはずの経済制裁を目的と混同しているかのように感じること(1番)もある。しかし、拉致被害者救出運動が未だ国民的な運動になっていないことを考えると、その点ばかりを論うような評論家気取りの態度は取れない。拉致被害者救出運動が国民的運動になっていないことは、保守派においては、北朝鮮人権法案反対派や金英男さん記者会見におけるネット上の嫌韓派に見て取れる。革新派は保守的言説への反証としてしか拉致問題を取り上げないし、拉致報道を「食傷」と平気で言える点からも、殆どは無関心である。ノンポリな大多数者は北朝鮮ミサイル発射問題にさえ興味を示さないか、ミサイルが発射されると拉致問題を忘れるような状況なので、いずれの層においても拉致被害者救出運動は成熟していない。本来、手段であるはずの経済制裁論が目的化してしまう危惧は、拉致被害者家族会よりもそれを支える組織や国民の方に、より強く感じる。


Q2.例え拉致問題が解決しなくとも、今後、同じ出来事が自分の身に降り掛かるとは思えない。

1. 現実的に考えて、自分の身に降り掛かるとはとても思えない。今日において北朝鮮による拉致が明るみになった以上、迂闊に工作活動を行う事は出来ないと考える。
2. 何とも言えない。
3. 自分の身に降り掛かる可能性は十分にある。拉致に関わった北朝鮮工作員が、処罰される事無く現在も日本社会において根を下ろしている現状を考えるべき。
4. その他。


A2.2番。自分の身に降り掛かるか否かといえば現状では起こりえない(1番)と考えるのが現実的ではあるが、一方では、拉致の実行犯もその経緯も内通者・工作機関についても、北朝鮮側からは何ら明らかにされていない(3番)。拉致問題が明るみになったからといって、現在においても北朝鮮の工作機関が国内に存在し、かつ、スパイ防止法は制定されていない状況では、拉致問題への関心が薄れれば、今後も拉致事件が起きないとは断言できない。拉致被害者救出運動は今日においてさえ、拉致事件が二度と起きないと断言するほどには盛り上がってはいないし、成熟してもいない。そのような状況では、自分の身に降り掛からないことを理由に、他人事として拉致問題を考えてはいけない。


Q3.小泉政権による対拉致問題への取り組みは、生ぬるいと考える。

1. 生ぬるいと考える。拉致被害者に残された時間はそう長くは無い事を踏まえるべき。
2. 何とも言えない。
3. 生ぬるいとは考えられない。多少時間が掛かっても、着々と地に足の付いた取り組みを行うべき。
4. その他。


A3.1番。この質問はつまり拉致問題の解決期限をどこに置くかということだろう。拉致被害者の生存におくか拉致被害者家族の寿命におくか。拉致被害者の確実な生存だけを求めるならば堅実・慎重に越したことはない(3番)。しかし、実際には拉致問題とは拉致被害者家族の問題でもあり、また、拉致被害者の北朝鮮での配偶者や子供の問題でもある。拉致問題が長期化するということは拉致被害者家族の寿命に関わることは誰にでも想像できる。では、北朝鮮で生まれた拉致被害者の子供(拉致被害者家族から見て孫)が成人しつつある状況を考えると、その子供達(孫達)が北朝鮮国民と結婚し、子供(拉致被害者家族から見て曾孫)が生まれた場合、彼らやその両親は北朝鮮国民か否か。問題解決の長期化は新たな問題を生み、その新たな問題は既存の拉致問題を複雑化させる。小泉政権の拉致問題への対応は、現状の国際情勢や国内世論の中ではよくやっていると思うが、これまでの日本政府や与野党の不作為を考えれば、批判を甘受してでも問題解決に向けて尽力して欲しい。


Q4.小泉政権による対拉致問題への取り組みが、拉致問題の解決へ大きく寄与していると考える。

1. 寄与していると考える。
2. 何とも言えない。
3. 寄与しているとは考えられない。
4. その他。


A4.1番。寄与していると考える理由は主に二点。一つは、2002年9月17日の日朝平壌会談。この時の訪朝がなければ、拉致問題は現在のようには取り上げられていない。もう一つは、小泉政権の日米同盟強化という基本政策。個々の政策においては生ぬるいと思うこともあるし、小泉首相から拉致問題解決への意欲を感じられないときもあるが、今年4月の横田早紀江さんとブッシュ大統領の面会、そして、先日の北朝鮮ミサイル発射問題での国連安保理決議採択を巡る駆け引きを見ると、小泉・ブッシュ間の蜜月が拉致問題の解決に寄与していることは間違いない。


Q5.国際社会における米国との連携が、拉致問題の解決へ大きく寄与していると考える。

1. 米国と連携した北朝鮮への締め付けが、今後の拉致問題の進展に大きく寄与していく。
2. 逆効果、中韓と連携して融和政策を取るべき。
3. 法整備も含め、日本単独で解決する道を探るべき。
4. その他。


A5.1番。理想を言えば、拉致被害者救出について全ての可能性を閉ざすべきではない(4番)。しかし、現実的に拉致問題の解決を考えれば米国との連携が優先されるのは当然である(1番)。北朝鮮の崩壊と難民流入を防ぐという観点で考えれば中韓との連携・宥和政策になるが(2番)、これは9.17以前の内閣および与野党の北朝鮮支援政策のことで、その時代には拉致問題は黙殺されていた。また、新北政権である韓国では、日本政府のDNA鑑定で金英男さんが韓国人拉致被害者であると断定されるまで拉致被害者達は見殺しにされてきた。中国が北朝鮮を制御しきれていないことは、ミサイル発射の一件で明らかになった。法整備については(3番)、主権国家としては当然のことだが、スパイ防止法さえ制定できない日本国においては、国内法の整備を待っているだけでは問題解決の長期化になりかねない。また、日本単独での解決となると、国内親北派による拉致問題解決を棚上げした日朝国交正常化という北朝鮮ペースの交渉を招きかねない。


Q6.北朝鮮問題は日本の安全保障としての核の問題が第一優先事項。ここで対応を間違うと数千万人の単位で被害が出るから。数十人、最大でも数百人の拉致被害は優先順位では二番目だ。

1. 冷酷だがその通り。もちろん拉致被害者には同情するし解決して欲しいと思うけど…。
2. 何とも言えない。
3. 反対。核の脅しに屈して妥協することは北朝鮮の狙いにはまることでしかない。国家の尊厳を失うことは国家としての自殺なのだ。
4. その他。


A6.3番。安全保障上、国民生命の多寡は重要な要素であり、現実的な政治の在り方としては核・ミサイル問題が優先されるが(1番)、それを口に出来るほど日本の政治家も国民も、拉致問題について真剣に考えてきたか、取り組んできたかというと、今現在に至ってもなお、そういう印象が見受けられない。拉致問題とは多数者の利益(北朝鮮崩壊による難民流入や経済的混乱の防止)のために少数者の不利益(拉致事件)を黙殺してきた問題である。これまで散々黙殺してきたにもかかわらず、今後も核開発問題やミサイル発射問題を理由に拉致被害者とその家族を見殺しにするのであれば、日本国はどの時点においても拉致被害者という少数者を見殺しにしたということになる。政治家や国民にそういう自覚があるのか、覚悟ができるのかといえば、たぶん無理。そのような状況になれば、驚くべき醜態を晒すと思う。それが充分想像できるので心情的には拉致問題も核・ミサイル問題と並ぶ問題と考える(3番)。1番の選択肢に根本的に賛同できないのは、拉致問題への視点が同情に留まっている点(および数千万人単位という被害想定)にある。同情に留まっている内は、核開発問題を金科玉条のように持ち出すべきではない。そういうことは日本側でやらなくても、北朝鮮側の人間が(北朝鮮人のみならず国内左派においても)存分にやってくれる。


Q7.拉致被害認定者である残り11人の帰還を以って、「拉致問題の解決」と考える。

1. 拉致認定被害者が帰ってさえくるのであれば、「解決」と考えても良い。
2. 拉致被害者の数は11人とは限らないかもしれないが、結果として妥当であると考えても良い。
3. 拉致の可能性が濃厚な特定失踪者を含めた残り100人以上に上る人々はどうなるのか。とても「解決」と考える事は出来ない。
4. その他。


A7.3番。拉致された全員の原状回復以外には「解決」はありえない。そのためには北朝鮮の民主化が不可欠である。但し、民主化を待っていては救出可能な拉致被害者とその家族を苦しめることにもなる。金正日政権に対しても圧力と対話によって、漸進的であっても拉致被害者救出を行うべきである。そういう現実的な場面では、先ず、拉致被害認定者11人の帰還が基点になるし、その帰国者から新たな情報を引き出すことが出来る。けれど、それは拉致被害認定者11人の帰還を以って幕引きにしようと考える勢力(日朝双方に存在する)との闘いでもある。国内革新派と与党内親北派の態度を見ていると、1番や2番という選択肢は幕引きを意味する。


Q8.日本人拉致被害者のみならず、その他外国人の拉致被害者、また、北朝鮮国内における人権問題の解決も併せて目指していくべきだ。

1. 当然である。自分達だけ助かれば良いという考えは、道徳的にも国際的にも、到底受け入れられる事ではない。
2. もちろん、これらの問題が解決するに越した事は無いし、日本政府も取り組んでいくべきだとは思うが、優先順位は考慮されて然るべき。
3. まずは自国の拉致被害者を救出する事が先決である。あれこれ手を広げた結果、拉致被害者救出に支障をきたしてしまっては本末転倒である。
4. その他。


A8.1番。個人的に自国民の救出を最優先に考える(3番)のは当然ではあるが、国家としては人権の観点はもとより、国際社会に拉致問題の重大性を訴えるためには、自国民の救出のみに拘泥していては理解が得られない(1番)。また、脱北者や他国の拉致被害者から日本人拉致被害者や特定失踪者の情報が入手できるかもしれない。日本人以外の拉致被害者や他の北朝鮮人権問題の解決にも政府として主導的な対応をすることが、結果的には日本人拉致被害者の救出に資することになると考える。分かり易く具体例を挙げれば、横田めぐみさんを救出するためには、金英男さんの救出も必須であるということ。


Q9.北朝鮮の体制が崩壊しない限り、この問題は解決しないのでは?

1. そう思う。アメリカに対する強力な外交カードを握って武力制裁に踏み切らせるしかない。
2. そう思う。でも中国と韓国がそれを許さないだろう。どうしたらいいのか分からない。残念だけど長引きそう。
3. ある意味そう思う。しかし拉致問題はある程度のところでいったん手を打って国交正常化を先に行うべきである。北朝鮮に市場経済が導入され、不可逆的に日本への依存度が高まれば自ずと政治的自由を求める声が高くなり先軍独裁体制は実質的に変化する。そのとき、拉致の解明は一気に進むであろう。
4. そうは思わない。このまま対話と圧力だ。圧力として経済制裁が必要。
5. その他。


A9.5番。基本は圧力と対話だが、全面的解決のためには民主化が必要である。日米による経済制裁と国際社会への協力要請、日本の圧力と対話による粘り強い交渉によって、民主化に促していくという一般論のようなことしか現状では言えない。他の選択肢の通りでは無事に拉致被害者が救出できるとは思えない。1番については、武力制裁およびその際の混乱によって拉致被害者が死亡するような事態は避けたい。2番については、問題解決が長期化した際に生じるであろう新たな様々な問題について検討されていない。3番については、「そのとき」がいつになるか判らず、しかも日朝国交正常化を先行しても拉致問題の解明が担保される訳ではない。4番については、体制の変化に触れられていない。圧力として経済制裁を用いることで対話を引き出し、拉致被害者の漸進的な救出を果たしながらも、全面的解決のためには北朝鮮の民主化が必要である。それだけ政府の舵取りが難しい問題である。


Q10.この運動をきっかけに日本の愛国心の高揚を図り、他の様々な問題に対しても応援に向かい団結していくべきである。

1. その通り。拉致問題と他の国益に関する問題は直接は関係ないが間接的には関係している。問題は愛国心だ。
2. 何とも言えない。
3. 反対。政治的なイデオロギーを持ち込むと運動の方向性が拡散するし、敬遠する人も出てくる。むしろリベラルな人でもこの問題には賛同するし怒りを覚えるという立場が大事。
4. その他。


A10.3番。反対。理由は二点。一つは、政治的なイデオロギーを越えて、国民全体の運動とするべき。もう一つは、拉致問題を使って愛国心の高揚を図ろうとする愛国者や憂国者を自称する者達は、実のところ拉致問題への関心はそう高くはないことを、北朝鮮人権法案反対派との対話で知ったから。嫌韓感情や自称・愛国者や憂国者の唱える「愛国心」は、拉致問題の解決にも、それ以外の問題にも、日本のより良い発展にも、有害無益である。


 この10個の質問が、政治的信条の踏み絵として利用されるのであれば困ることだが、拉致問題について考える契機や思考の整理に繋がるのであれば、意義のあることだと思う。blogを開設していない方でも、一度、この質問と格闘してみて欲しい。公開するか否かは考えずに。


posted by sok at 23:59| Comment(0) | TrackBack(1) | 日本人拉致事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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