2006年07月14日

北朝鮮経済制裁決議案についてのメモ

 7月10日以降の北朝鮮経済制裁決議案についてのメモ。日本の初期の対応は素早かったし、かなりの部分で成功していたと思う。北朝鮮の同盟国である中国やG8サミット議長国であるロシアの面目を利用して、外交らしい外交を展開していたと思う。

 1993年のノドン発射の際には国際社会は何もしなかったし、98年のテポドン1号発射の際は法的拘束力のないプレスリリース(報道陣向け声明)に終わった。それに較べれば、当初、強気な経済制裁決議案を提出しておいて、中露が求める議長声明と検討させ、途中、安保理議長国であるフランスの二段階決採択案などもあったが、これにも動じず、中露に独自の北朝鮮非難決議案を提出させるところまで持っていった。このことは、充分評価に値する。中露の対案は、懸念と遺憾の表明に過ぎないのが対応として手緩いけれど、過去二回の国際社会の無策に較べれば、これでも遥かに進展している。

 しかし、ここにきて少し危うくなってきた。それはイランの核開発との関係。当初、経済制裁決議案の共同提案国であった英仏が、先ずは議長声明を行い、必要があれば制裁決議の採択を行うという2段構えの立場にシフトした。これは中露の切り崩し工作だろうけれど、では、バーターで取引されたものは何か。イランのウラン濃縮関連活動停止を求める決議案採択だろう、と。イランの核開発問題に関しては、中露も態度を軟化させ、フランスのドストブラジ外相は、この決議に従わない場合は国連憲章7章に基づく経済制裁などの可能性もあると言及している。この対イランにおける中露の妥協が対北朝鮮における英仏の転向へ、北朝鮮経済制裁決議案から非難決議案へと流れが変化した要因だと思う。

 どちらに転んでも日本を非難したいだけの一部偏向メディアに組する気はないが、正直、日本のタカ派外交が米英仏の中東戦略のダシに使われたという印象もないではない。それだけ欧米が、極東よりも中東情勢を緊急の課題と捉えているのだろうけれど、であれば、尚更、日本の常任理事国入りが必要のように思う。今回の件は、日本の防衛と外交の在り方、危機における政治家の技量、国際情勢に対する見方について、国民の目を覚ます契機になったと思う。まだ、最後の駆け引きがある。如何に中露から妥協を引き出すか。北朝鮮包囲網を作るか。


 現時点では北朝鮮を巡る今回の協議では、欧米が最も利益を得、日本はそこそこに粘り、中露は何とか面目を保ち、韓国は相変わらずだったという印象。

(2006年07月09日)産経:「北朝鮮、93年にも2日間で3発発射」 韓国国防関係者
(2006年07月11日)東奥:制裁決議案の採決延期/はしご外された強硬路線
(2006年07月12日)産経:米上院院内総務、大量破壊兵器不拡散の改正案提出へ
(2006年07月13日)産経:2段階案拒否 日本、安易な妥協できず
(2006年07月13日)産経:中露が独自の非難決議案提出 北ミサイル問題
(2006年07月13日)毎日:北朝鮮ミサイル:制裁決議案・中露が対案 早期収拾の空気強く 日本、苦しい立場に
 ◇中露の北朝鮮非難決議案(要旨)
 【ニューヨーク坂東賢治】中露両国が12日、安保理各国に示した北朝鮮非難決議案の要旨は次のとおり。
一、7月5日の北朝鮮によるミサイル発射がこの地域及び他地域の平和と安定に否定的な影響を与えたことに深い懸念を表明する。
一、北朝鮮が事前通告をせず、民間航空、船舶を危険にさらしたことに深い懸念を表明する。
一、北朝鮮が近い将来、ミサイルを再発射すると示唆していることに深い懸念を表明する。
一、北朝鮮がミサイル発射凍結を解除したことは遺憾だ。
一、北朝鮮が核拡散防止条約(NPT)からの脱退を宣言し、NPTや国際原子力機関(IAEA)の保障措置義務に反して、核兵器の追求を公言していることに遺憾の意を表明する。
一、北朝鮮にミサイル発射の凍結というこれまでの約束を再構築するよう求める。
一、全加盟国に北朝鮮のミサイル計画に役立つな物資、技術の移転を防止するよう警戒を求める。
一、全加盟国に北朝鮮からミサイル関連物資、技術を導入しないように求める。
一、地域の全国家、特に北朝鮮に対し、自制を示し、緊張を高めるような行動を避け、政治的、外交的努力を通じて不拡散問題の解決に取り組むように求める。
一、北朝鮮に対し、即時無条件に6カ国協議に復帰し、05年9月19日の共同声明、特にすべての核兵器及び存在する核計画の廃棄、NPTとIAEAの保障措置協定への復帰の迅速な履行に取り組むように強く求める。


(2006年07月13日)共同:イラン核、安保理再協議へ 6カ国、制裁の可能性言及
(2006年07月13日)朝日:中ロ決議案、日米側の切り崩し狙う 英仏なども評価
(2006年07月14日)産経:北朝鮮制裁支持から一転、イラン核問題照準 安保理
(2006年07月14日)産経:北制裁決議、中露案受け修正 政府、決着目指す


 国連非常任理事国ではない韓国の動きについてはあまり興味が無いけれど、北朝鮮の六カ国協議への早期復帰も国際社会の懸案であり、こちらについては韓国にも義務と責任がある。その点では南北閣僚級会談の行方はどうであったかも、多少は(期待していないけれど)気になるわけで、では、どうだったかというと相変わらず。韓国の立場上、経済制裁決議案に否定的であるのは仕方ないとして、「ミサイルより日本が脅威」で北朝鮮と意見を一致させる辺りは、もうどうしようもない。北朝鮮はやりたい放題ですね。

(2006年07月13日)朝鮮日報:【ミサイル発射】韓国、北朝鮮制裁決議案の無力化図る
(2006年07月13日)朝鮮日報:【南北閣僚級会談】北朝鮮、「革命の聖地」訪問を要求
(2006年07月13日)朝鮮日報:【ミサイル発射】南北、「ミサイルより日本が脅威」で一致
(2006年07月13日)朝鮮日報:【南北閣僚級会談】北代表団「会談決裂は韓国の責任」


【追記:状況に変化があれば順次リンクを貼っていきます】
(2006年07月14日)朝日:イスラエルのガザ侵攻非難決議を否決 安保理で米拒否権
(2006年07月15日)朝日:北朝鮮決議案の一本化不調 日米、「制裁」で中ロに譲歩迫る
(2006年07月15日)産経:日米、制裁決議採決へ 中露なお反対
posted by sok at 06:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 核・ミサイル問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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