2009年06月23日

クローズアップ現代『えん罪はなぜ見過ごされたか』

 2009年6月23日放送のNHK『クローズアップ現代Wikipedia)』をテキスト起こししました。誤字脱字、間違いなどありましたら、御指摘よろしくお願い致します。確認の上、訂正致します。出演者の敬称は番組内で記されているもの以外は省略します。

クローズアップ現代(番組HPより)

6月23日(火)放送
えん罪はなぜ見過ごされたか

平成2年に栃木県で4歳の女の子が殺害された足利事件。無期懲役が確定した菅家利和さんが、DNAの再鑑定で犯人ではない可能性が高いとされ、逮捕から17年半ぶりに釈放された。捜査段階から裁判に至るまで誤った判断の拠り所となったのが自白と精度の低いDNA鑑定だった。菅家さんが涙を流した取り調べ、矛盾する自供の内容、二転三転する裁判での証言。無実のシグナルがなぜ見過ごされたのか。科学捜査を象徴するDNA鑑定への過信はなかったか。そして、裁判所によるDNA再鑑定の実施が遅れた原因は・・・。 またしても、冤罪を防げなかった日本の刑事司法。捜査や裁判のどこに落とし穴があったのか、失われた17年を取り戻し始めた菅家さんへの密着取材と警察官など多数の関係者への取材で検証する。
(NO.2755)

スタジオゲスト : 木谷 明さん(法政大法科大学院教授・元東京高裁部総括判事)
2009年6月23日 クローズアップ現代

【冒頭VTR】

ナレーション(男性):足利事件で再審、裁判のやり直しが決まった菅家利和さん。逮捕直後の映像です(平成3年12月)。小さく首を振るこの仕草。「自分はやっていない」、精一杯の抗議に当時は誰も気づきませんでした。逮捕後、菅家さんが家族に向けて出していた手紙です。無実を訴え続けた菅家さん。しかし、その声が受け入れられることはありませんでした。

菅家利和さん:全然信じてくれない。絶望的でしたよ。

ナレーション(男性):逮捕の決め手になったDNA鑑定。当時は精度が低かったにもかかわらず、捜査関係者はその結果を過信していました。

当時の捜査関係者:もう、これは間違いないと、鬼に金棒だなという気持ちはしました。

ナレーション(男性):一旦は犯行を認めてしまった菅家さん。裁判所も「自白」の真偽を見抜くことができませんでした。冤罪は何故見過ごされたのか。関係者の証言や資料を基に検証します。


No.2755 えん罪はなぜ見過ごされたのか


【スタジオ】

国谷裕子:こんばんは、クローズアップ現代です。刑事裁判は一人の人間の生命や自由を奪うなど、取り返しがつかない重大な結果をもたらします。身に覚えのない罪、4歳の女の子が殺害され、遺体で発見された、いわゆる足利事件の犯人として逮捕されたとき、菅家利和さんは45歳。今日、東京高等裁判所は、犯人ではない可能性が高いとして、菅家さんの裁判のやり直しを認める決定を行い、これによって菅家さんの無罪が確定する見通しになりました。取り返すことが出来ない菅家さんが失った17年もの歳月。何故、取り調べや司法の場で冤罪が見過ごされたのか。菅家さんが犯人だとする流れは、当時、最新の科学捜査であったDNA鑑定の結果が菅家さんと一致したこと、そして、菅家さんが自白したことで一気に作られていき、菅家さんが犯行を否認した後も、検察、裁判所、そしてNHKをはじめマスコミも、犯人前提の眼差しを変えることはありませんでした。それだけに、今日の高等裁判所の決定を重く受け止めなくてはならないと思います。捜査も裁判も自白偏重、自白に頼りがちと思われてきた中で起きた冤罪。先ずは捜査の段階で見過ごされた冤罪のシグナルからご覧下さい。


【VTR:えん罪招いたDNA過信】

報告 田代翔子 NHK宇都宮:足利事件の捜査で使われたDNAの鑑定書です。この鑑定が菅家さんの人生を大きく狂わせました。事件が起きたのは19年前(栃木県警本部 平成2年)。当時、足利市では2件の幼女殺害事件が未解決のままになっていました。

捜査関係者A(当時):[音声は変えています]3つ目の事件だから、この事件を挙げなければ、もう警察の存在価値はないよ、と。そういう、その悲壮感というのがあったというのは事実ですよね。

報告 田代翔子 NHK宇都宮:こうした中、浮かび上がってきたのが菅家さんでした。現場に土地勘があり、アリバイも無かったからです。事件から1年余り。有力な証拠が得られない中、警察が望みを賭けたのが、2年前に実用化されたばかりのDNA鑑定でした。

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報告 田代翔子 NHK宇都宮:鑑定の結果、被害者のシャツに付着していた体液と、菅家さんのDNAの型が一致しました。当時の鑑定では、800人に1人が一致。今の、4兆人に1人という精度より、遙かに低いものでした。それでも警察は、充分な証拠になると判断しました。

捜査関係者A(当時):[音声は変えています]800人に1人の割合の結果としても、もうこれは間違いないと。まさにこれは鬼に金棒だなという気持ちはしましたよね。

報告 田代翔子 NHK宇都宮:[菅家さんが取り調べを受けた部屋]警察は、菅家さんの取り調べに踏み切りました。菅家さんは、犯行の時間帯は家にいて、外出していないと否認し続けました。

菅家利和さん:「いや、やってません」と。「いや、お前だ」と言うんですね。「いや、やってませんよ」と。その繰り返しですよ。逃げるに逃げられない、どうにもならないんですよ。本当に密室ですからね。

報告 田代翔子 NHK宇都宮:朝から始まった取り調べは、夜10時におよんでいました。菅家さんは捜査員に「証拠は挙がっている」と迫られたと言います。

菅家利和さん:いや、やっぱりもう「証拠があるんだ」と言われて、それでもう、どうとも言えないと、そう思いましたよ。どうなっても構わないと思って、絶望、絶望的ですか、ってなっちゃったんですかね。

報告 田代翔子 NHK宇都宮:菅家さんは悔しさのあまり、号泣しました。身に覚えのない犯行を自白せざるを得なかったからです。しかし、警察の受け止め方は全く逆でした。

捜査関係者B(当時): 20分ほど泣いていた。完全に「落ちた」と思った。

捜査関係者C(当時):容疑者が涙を流すのは、強引な取り調べによるものか、心から反省したからなのか、長年の経験ですぐわかる。

報告 田代翔子 NHK宇都宮:その後、菅家さんは、やってもいない犯行の詳細な供述を始めました。冤罪事件に詳しい専門家は、無実の人が嘘の自白をするのは決して珍しいことではないと言います。

奈良女子大学 浜田寿美男 教授:結局は、じゃあ自分が喋る以外にないんだということを思い知らされるわけですよね。で、そのときに、あの、いわば僕が言ってるのは「犯人を演じるんだ」と言ってるんですけどね。犯人に扮する、もうそれ以外に、あの、逃げ道がないんですね。

報告 田代翔子 NHK宇都宮:[菅家さんの供述調書]菅家さんが詳しい供述を続ける一方で、警察はその裏付けが取れないという問題に直面していました。調書には「午後6時か7時頃に、被害者を自転車に乗せて現場に向かった」と書かれています。その現場です。矢印のように移動したと供述しています。

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報告 田代翔子 NHK宇都宮:当時も、この野球場では練習が行われていました。

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報告 田代翔子 NHK宇都宮:菅家さんが通ったというルートには、その他にも沢山の人がいました。警察は1000人以上に話を聞きましたが、目撃証言は得られませんでした。

捜査関係者D(当時):子連れが集まる公園で、特段不思議な光景ではない。誰も気にとめなかったのだろうと考えた。

報告 田代翔子 NHK宇都宮:犯行後の足取りも確認できませんでした。供述では「スーパーに立ち寄り、缶コーヒーやおにぎりを買った」としています。しかし、店のレシートの控えを全て調べても、その記録は見つかりませんでした。

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報告 田代翔子 NHK宇都宮:当時の捜査関係者は「1年以上前のことなので、記憶が曖昧で、別のものを買ったとも考えられる。嘘を言っているとは思わなかった。」と話しています。供述の裏付けが不充分なまま、菅家さんは殺人などの罪で起訴されました。DNA鑑定の結果が支えとされたのです。

捜査幹部(当時):自白は目撃者もなく、ウラのとりようがなかった。DNA鑑定が裏付けになってくれると、タカをくくっていたのかもしれない。結果的に菅家さんを17年間も服役させてしまったことに、身を切られる思いだ。


【スタジオ】

国谷裕子:え、今夜は37年間に亘って裁判官を務めた経験をお持ちの木谷明さんにお越し頂きました。現在は法政大学法科大学院教授を務めてらっしゃいます。自白と、そしてDNA鑑定の結果というものはあったものの、供述の裏付けが不充分なまま起訴に踏み切った。今回の菅家さんを巡る、その冤罪の始まりというのをどのように捉えてらっしゃいますか。

木谷明さん 法政大学法科大学院教授:これはさっきVTRにもありましたようにね、やはり捜査が、捜査機関が大変追い詰められた状況にあったと。連続して起こった幼女殺害事件について、一向に犯人検挙に至らない。何とかして犯人を検挙したいという焦りがあったんではないでしょうか。で、それが無理な取り調べに結びついて、たまたま上手い具合にDNA鑑定が登場した、と。このDNA鑑定が、非常に高い証拠価値があるものと思われましたので、それにちょっと目くらましをさせられたという点があるんじゃないかと思います。

国谷裕子:しかし、そのDNA鑑定の結果が無ければ、もしかして起訴…。

木谷明さん 法政大学法科大学院教授:いやぁ、できなかったでしょうね。だから、そういう意味じゃあ、大変恐ろしいことだと思います。


【問われる自白の信用性】

国谷裕子:今のリポートの中に、その、無実の人が、その、自分がやったということを自白することは、まあ、あると、今その専門家の発言がありましたけれども、珍しいことではないという発言がありましたけれども、しかし、重大事件の場合、もし自白した場合、死刑あるいは無期懲役などの罪に問われることにもなり、罰を受けることにもなるかもしれないわけですよ。それでも人というのは、虚偽の自白をすることがあるんでしょうか。

木谷明さん 法政大学法科大学院教授:いや、普通にはそういうことはあり得ないんだと、私は絶対そんなことは自白しませんと、皆さんおっしゃるんですね。ですけれども、実際の事件を見てますと、取り調べってのは、そんな生易しいものじゃないんですね。それで、もう長期間、長時間に亘って孤立無援の状態に置かれる。心理的に追い詰められる。現在の苦しい状況から何とかして逃れたいということになると、「まあ、いずれこれは嘘のことなんだから、裁判所に行って本当のことを言えば分かってもらえる」という風に思ってですね、現在の苦痛から楽になりたい一心で嘘の自白をしてしまうということが、時に、というか、かなりの頻度であるようです。

国谷裕子:あの、実際に、その、まあ、外から見ていると短い時間でも、その、自白をしてしまうんですか。

木谷明さん 法政大学法科大学院教授:そうですね。この事件、まあ短いというかどうかは問題ですけどもね、この事件は8時から始まって10時過ぎに自白した、と。これは決して短くはないですよね。普通の人は、そんなに長時間、取り調べに耐えられるかどうかって言ったら、私は決して耐えられないんじゃないかと思います。中には数時間で自白してしまった完全な冤罪事件もあるわけですね。で、そういうことを思うと、取り調べの圧力が如何に強烈なものであるかということは、自覚しなくちゃいけないんじゃないでしょうか。

国谷裕子:で、実際にご経験もおありですよね。

木谷明さん 法政大学法科大学院教授:私もそういう事件、幾つか扱ってますね。で、ごく若い頃に扱った事件で、そういう経験があります。あの、最近もありますけどね。ええ。

国谷裕子:まあ、そういった嘘の自白を防ぐための、やはり対応策というのもこれから必要になってきますね。

木谷明さん 法政大学法科大学院教授:そうですね。取り調べの状況というのは、外から見えないというのが一番の問題ですね。で、取調官を証人尋問すると「そんなことはしてません」と言います。被告人は「こんな酷いことされた」と言っても、そこで供述が対立してしまう。そうすると、裁判官がどうしても取調官の証言を信用してしまう傾向がある。これが一番いけない。やっぱり、だから、取り調べの状況は外から見えるようにしなくちゃいかん。いわゆる可視化というのは、どうしても必要だと思います。

国谷裕子:はい、続いてご覧頂きますのは、長い裁判の過程で冤罪が何故見過ごされてしまったのか。無実の主張、そしてDNA再鑑定を求める声は聞き入れられませんでした。


【VTR】

ナレーション(男性):菅家さんが警察に逮捕された後、家族に出した14通の手紙です。実は菅家さんは、裁判が始まる前から無実を訴えていました。

菅家利和さん(手紙):どうか助けて下さい。

菅家利和さん(手紙):自分が拘置所にいるなんて、わるい夢を見ているようです。

菅家利和さん(手紙):私の無実を信じて下さい。


えん罪のサイン 無実の主張


ナレーション(男性):裁判の記録を辿っていくと、菅家さんの無実の訴えは悉く退けられていたことが分かりました。


【司法も見過ごした無実の訴え】

ナレーション(男性):1審で弁護にあたった梅澤弁護士は、当初、手紙の存在を知りませんでした。面会したときも犯行を認めたため、犯人であることに疑いを持たなかったと言います。

梅澤錦治さん:1対1の面会で本人がやったと言っているのだから、この事件は本人がやったと思ったよ。おれはこれ(死刑)になるんじゃないかという心配してるから、その心配ないよ、と。

ナレーション(男性):[宇都宮地裁 平成4年6月]裁判が始まっても菅家さんは、法廷ではまだ無実を言い出せずにいました。弁護士の問いかけにただ頷くだけでした。

弁護士:結果的にこういう大事件を起こして殺しちゃったということは、間違いないんだね。

菅家さん:はい。

弁護士:やったことは間違いないんでしょう。

菅家さん:はい。

ナレーション(男性):菅家さんは、常に傍聴席を気にしながら発言していたと言います。

菅家利和さん:傍聴席にですね、刑事がいるんじゃないかと。「それは違うだろう」とか何か言われるんじゃないかと、びくびくしていましたよ。取り調べやって、怖いっていうイメージしかなかったですから、本当に。

ナレーション(男性):この審理の後、無実を訴えていた手紙が、初めて家族から弁護士に届けられました。

菅家さんの手紙:本当の所、私は無実です。

菅家さんの手紙:真犯人は別にいます。

菅家さんの手紙:私が無口だから、こういうことになってしまったのか。

ナレーション(男性):[宇都宮地裁 平成4年12月]弁護士は法廷で、菅家さんに手紙の真意を尋ねました。

弁護士:無実と書いてあるが、どういう心境なのですか。

菅家さん:無実というのはやっていないということです。

弁護士:今まで言ったことは、うそですか。

菅家さん:やっていません。

ナレーション(男性):初公判から10カ月、初めて法廷で本人が語った無実の訴えでした。

1審の弁護士 梅澤錦治さん:びっくりしたよ。ひとことも今まで否認しなかったのを、手紙の中で無罪だと言うんだから。私はやってませんと言ってるのだから。じゃあ、なぜ早くそう言わなかったのかってことだ。

ナレーション(男性):突然の無実の主張。しかし、法廷の場で検証されることはありませんでした。当時の裁判官は、NHKの取材に次のように答えています。

1審の裁判官:判決にもある通り、法廷での供述はアリバイなどの主張もなく曖昧で、手紙があったが、自己弁護的な表現だと思った。家族に見捨てられるのがこわくて、無実を訴えた可能性が高いという心証だった。

ナレーション(男性):1審の判決は、無期懲役。結局、無実の訴えは、弁護士にも裁判官にも充分顧みられることはなかったなかったのです。


えん罪のサイン DNA再鑑定


ナレーション(男性):裁判のもう一つの焦点は、DNAの再鑑定をすべきかどうかでした。菅家さんは1審の裁判のときから、DNA鑑定をやり直して欲しいと訴えていました。

菅家さんの手紙:DNA鑑定はちがっています。もう一度調べてもらいたい。無実の人間が犯人にされてはたまらないです。

ナレーション(男性):2審からはDNA鑑定に詳しい新たな弁護団が結成されました。

弁護団(2審後) 佐藤博史さん:DNA鑑定は絶対というものではない、と。つまり、同じ型の沢山いて、菅家さんはたまたま、そのヒットしただけで、自白が違ってる、と。

ナレーション(男性):弁護団は最新の技術を使って、DNA鑑定を独自にやり直すことにしました。拘置所の菅家さんに髪の毛を封筒に入れて郵送してもらいました。

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ナレーション(男性):鑑定の結果、菅家さんのDNAの型は18-29と呼ばれる型だと分かりました。

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ナレーション(男性):一方、犯人の型は18-30。弁護団は一致しないとして、再鑑定を求めました。

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ナレーション(男性):しかし、最高裁は新たな鑑定結果について、判断を示しませんでした。何故、再鑑定を認めなかったのか。当時の裁判官5人全員に取材しましたが、具体的な説明はありませんでした。

5人の最高裁裁判官:結論は決定の通りで個別に答えられない。

ナレーション(男性):無期懲役が確定した菅家さんは、(千葉)刑務所の中からDNAの再鑑定を訴え、裁判のやり直しを求めました。再審請求から5年。宇都宮地方裁判所は、訴えを退けました。理由は、弁護団が思いもよらないものでした。

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宇都宮地方裁判所:弁護団が独自に行ったDNA鑑定の髪の毛は、本人の毛髪だという裏付けがない。

菅家さん:信用できないんだったらね、僕が、来て、調べればいいんですからね。簡単ですよね。血を採ってもいいしね、(髪の)毛を採ってもいいし、それも全然やらないんですもん。完全に無視ですよ。門前払いですよ。


【スタジオ】

国谷裕子:もう一度調べて欲しいという菅家さんの声は、なかなか聞き入れられなかった。そして弁護側が行った、その独自のDNA鑑定も拒否された。何故、このようなことになるんですか。

木谷明さん 法政大学法科大学院教授:まあ、何故か、それは何とも分かりませんが、私は再審請求を受けた、そのへんの裁判所が鑑定を却下した、この措置は誰が考えても弁護の余地が無いと思ってます。真犯人がDNAを調べてくれなんて言うことをいうはずがないんですから、そういうことを言ってきたということ自体で、怪しいと思わなくちゃいけないと思いますね。で、その点は、ですから大変残念なことでした。だから、その背景には、最高裁判所が再審について非常に厳しい態度を取ってる、なかなか認めないということがあったのではないかと思ってます。

国谷裕子:自分が言っても言っても信じてもらえない。菅家さんの言葉からは孤立無援の、その状況ってのが窺えるんですけれども、ただ、裁判所というのは本来は、弱い立場に置かれた人の味方であるべきではないですか。

木谷明さん 法政大学法科大学院教授:まったくその通りです。その通りです。


【えん罪を無くすには】

木谷明さん 法政大学法科大学院教授:ですから私は、真相は常に被告人が言ってる通りではないかと、真実を知ってるのは被告人だけなんですから、その人の言うことを蔑ろにしちゃいけないということを、かねがね言ってるんですが、なかなか、それの、私の考えが全体に浸透していかないと、もどかしい思いを持ってます。それは何が原因かというと、被告人はやはり罪を逃れたいと思って嘘を言うんじゃないかと、それに対して取調官の方は嘘を言う理由がないと、そういう誤った思い込みがどっかにあるんじゃないかと思います。

国谷裕子:その、自白に頼る危うさというのが今回の経緯を通して、くっきりと見えてきたわけですよね。

木谷明さん 法政大学法科大学院教授:そうですね。

国谷裕子:この自白っていうことの、その捉え方ってのはどうあるべきなんですか。

木谷明さん 法政大学法科大学院教授:自白は、ですから、そんな決定的な決め手にしてはいけないんでしょうね。だから、もっと客観的な証拠、客観的な事実を積み上げて、この人が犯人だということが、かなりの程度、立証された場合に、最後の、あと一息のところを踏み切るもの程度に使うべきもので、自白にどっぷりと依存してしまうというのは、誤りの基だと思います。


【足利事件が問いかけるもの】

国谷裕子:まあ、今回のケースを通して、司法に対する信頼が大きく傷付いたと思いますけれども、今回の冤罪を繰り返さない、こうした冤罪事件を繰り返さない上で、何を考えなければいけないんでしょうか。

木谷明さん 法政大学法科大学院教授:うーん、これはやはり、その、仮に真犯人が何人か逃れることがあっても一人の無辜を罰してはいけないんだという、その古くから言われている、この法格言をですね、忠実に実行することじゃないかと。そこの、そういう意識が薄れますと、得てして無実の人を処罰してしまう。自白についても本当に批判的な目で検討しなくちゃいけないんじゃないかと思います。

国谷裕子:裁判の場では本人が言ってる言葉に、本当に真摯に耳を傾ける。

木谷明さん 法政大学法科大学院教授:はい、まったくそうですね。本人が言ってるのが真相なんじゃないかという目で見なくちゃいけない。これは本当にそう思います。

国谷裕子:どうもありがとうございました。木谷明さんとともにお伝えして参りました。これで失礼致します。

【25:57】


※この日記は2009年7月18日19時00分頃に公開しました。
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