国籍法改正の経緯と争点
(2008年6月4日)最高裁判所大法廷判決:国籍確認請求事件婚外子国籍訴訟(pdf)
(2008年6月5日)東京:婚外子差別 国籍法は違憲 最高裁逆転判決 比人母の子に日本籍注目の要旨・全文
多数意見は、両親の結婚要件は一九八四年の法改正当時は合理的だったとしたが、家族観や家族形態が多様化したことを踏まえ▽婚外子差別を禁じる条約を日本が批准▽諸外国は同様の要件を廃止−など社会的変化を指摘。原告らが国籍取得届を出した〇三年には、要件の合理性は失われていたと判断した。
さらに「国籍取得は基本的人権の保障に重大な意味があり、子の不利益は見過ごせない」と言及。「日本人の父の婚外子にだけ国籍を認めないのは不合理な差別で違憲」と結論付けた。
(中略)
日本人の両親から生まれた嫡出子らは生まれながらに日本国籍が得られるが、同じく日本人を血統上の親に持ち、法律上の親子関係があっても、父母が結婚していない婚外子だけは届け出によっても日本国籍を得ることができない。日本国籍の取得は基本的人権の保障を受ける上で重要な意味を持つことから、この差別で受ける不利益は看過しがたく、立法目的との関連性も見いだし難い。
(2008年6月5日)Matimulog:arret国籍法違憲判決
争点は二つに分かれる。
1.国籍法3条1項が日本人の父親に認知された外国人女性の子のうち準正となった子(認知後に両親が婚姻届を出した子)にのみ届出による日本国籍取得の途を開き、非嫡出子のままの子(両親が婚姻届を出さなかった子)にはその途を開かなかったことが、法の下の平等に反するかどうか
2.仮に反するとしても国籍法が国籍取得を認めていないケースに国籍取得を認める判決を出せるかどうか。
こうして見ると国籍法改正の経緯は、ウェブ上の反対論者が語るような所謂「特定アジア(※)」への売国行為としてではなく、嫡出子と非嫡出子を巡る不平等の是正・解消の動きであるという事情が分かります。
また、最高裁の違憲判決を受けて政府が閣議決定した経緯から考えれば、国籍法改正反対論のハブサイト『国籍法改正案まとめWIKI』のトップページに掲示されているYouTube動画が指摘するような河野太郎議員による売国行為論も失当です。
(2008年11月4日)時事:国籍法改正案を閣議決定=違憲判決の結婚要件削除
政府は4日午前の閣議で、最高裁の違憲判決を受け、父母の結婚を子の国籍取得の要件とした規定を削除する国籍法改正案を決定した。今国会での成立を目指す。
(後略)
河野議員自身による説明と併せて、国籍法改正の経緯を御確認下さい。
(2008年11月14日)衆議院議員 河野太郎発行メルマガ「ごまめの歯ぎしり」ブログ版:国籍法に関するQ&A
議連の案内文について
産経新聞の阿比留瑠比記者が自身のブログにて、『国籍法改正案を検証する会合』に賛同する議員の会」の案内文を紹介しています。ウェブ上で、同内容のコピペを使用されている方も何人か見かけましたので、気になった点について言及しておきます。
(2008年11月14日)国を憂い、われとわが身を甘やかすの記:国籍法改正案をめぐり、議員たちも立ち上がりました
この議連は、案内文に国籍法改正によって「想定される偽装認知」について例示していますので、それもそのまま掲載します。
一、第三国の女性を、国内の犯罪組織に所属している男性が大量認知して、売春等犯罪に悪用。(国際的に「性奴隷」と批判される)
二、国際テロリスト及びその子孫を認知することも可能になる。仮に、正規の日本国籍を取得した「日本人」がテロ事件を起こした時に損なう国の名誉は甚大である。(国際的にテロ国家と批判される)
三、現在、日本の国籍が高額で売買されている現状では、日本国内に長期滞在することを目的として、犯罪組織の男性でなくても、経済的に困窮している男性に高額な報酬で「偽装認知犯罪」が一般的に行われるであろう。
四、第三国で生活している女性が、日本の「社会福祉制度」の悪用を意図して、「特別在留許可」等の目的で第三国で生まれ生活している第三国人の子供を、日本人男性に「認知」してもらい日本入国を果たす。「改正案」には扶養の義務がないので、入国後は「育児手当」「生活保護費」など税金が使われる。
五、扶養の義務が無いことで、国内に短期滞在している第三国人女性が「特別在留許可」取得を目的として、「大金」を支払って日本人男性の子供を妊娠する可能性もある。これは「偽装認知」としての犯罪ではないので、「DNA鑑定」しても防ぐことはできない。
この案内文の第四項には『「改正案」には扶養の義務がないので』とありますが、民法には820条(監護及び教育をする義務)もあれば、877条(扶養義務)もあります。また、日本国は二重国籍を認めておらず(重国籍となる人に対してはいずれかの時点で国籍選択)、既に国籍を有している子供を連れて来ても、それだけで日本国籍が与えられるということにはなりません。
第二項目に関しても、正規の日本国籍を取得した人に対して、括弧ありの「日本人」と記述するという表現上の不可解さ(この場合は括弧なしの日本人)とは別に、わざわざ無国籍の児童を連れて来て認知し、テロリストとして活動できる年齢になるまで養育してから、テロ事件を起こして日本への国際的非難を喚起させるという方法をテロリストが用いるだろうかといえば、これはあまりに遠大な発想(というよりも迂遠な計画)です。
議連の案内文の掲載ということで、阿比留記者自身が書かれたものではありませんが、転載するにあたっては何らかの補足があっても良かったと思いますし、今後、この議連の文章をコピペされる方は、事実誤認の部分に関しては訂正された上で議論された方が、持論の説得力を保てることと思います(※2)。「偽装認知」への重罰化を盛り込むよう主張することに、懸念はともかく陰謀論や事実誤認は不要です。
北朝鮮人権法案反対論と同様の煽り
個人的には、同法案への反対論を読んでいて、2年前の北朝鮮人権法案反対論を思い出しました。あのときも『ジャーナリスト宣言 @Wiki - 北朝鮮人権法案』というものがあり、北朝鮮人権法案が成立すれば、日本に大量の難民や不良外国人が押し寄せてくるかのような煽りが見られましたが、同法案が成立して2年以上が経ち、現在の日本国の治安が特に酷くなったという話は聞きませんし、大量に難民が押し寄せてくるということもなく、我が国が北朝鮮に乗っ取られたということもありませんでした。あの頃、差別的な言辞まで弄して煽動した反対運動でしたが、結果は彼らが危惧するようなことにはなりませんでした。煽動を用いれば、一時的にはその効用を享受できるかもしれませんが、長期的にみれば言説の信用力低下という形で不利益を被ることになります。国籍法改正論議においても、冷静な議論がなされることを望みます。
国籍法改正論議に参入するにあたって参考になる記事
(2008年6月4日)碁法の谷の庵にて:8例目の法令違憲判決〜国籍法違憲判決〜
先ずは、法改正の前提となる婚外子国籍確認請求訴訟の違憲判決を確認しなければなりません。上記リンク先の記事では、今回の判決の解説と意義にとどまらず、今後影響がでるであろう相続分差別事案にも言及されています。判決が出たその日のうちにこれだけの解説記事を書かれる方がいて、その知見と労力の恩恵を得られるのは有り難いことです。判決文と併せて御確認下さい。
(2008年6月18)NHK解説委員室ブログ:視点・論点「国籍法違憲判決と今後の課題」
【19日21時00分頃追記】NHK解説委員室ブログでは、中央大学の奥田安弘教授が違憲判決の解説をされていました。この記事の中では、偽装認知のリスクについても、国籍法改正が求められることについても、相続分差別裁判についても触れられています。「偽装認知が割にあわないことを広く一般市民に知らせると共に、真実の認知を保護することが重要だろうと思います。」という言葉に、全面的に同意します。【追記ここまで】
(2008年11月15日)半可思惟:国籍法改正について語るための基礎知識(1):違憲判決の図解
(2008年11月16日)半可思惟:国籍法改正について語るための基礎知識(2):裁判官たちは何を争い、何を国会に託したのか
現行の国籍法の問題点(最高裁の多数意見が問題とした点)について、図解による場合分けで分かり易く説明されています。国籍法改正に反対されている方の中には、同法案で「誰が得をするのか」と疑問視する意見もありますが、上記リンク先は、そうした疑問への回答にもなっています。
(2008年11月16日)いしけりあそび:○○○!知恵袋 国籍法は改悪なんでしょうか?
(2008年11月18日)いしけりあそび:どうしてもDNA鑑定が気になるけど、冷静に、法的な思考をする準備はあるよ、という方へ。
【同日23時20分頃追記】北巣本保育園への行政代執行問題の際にも、法律的観点からの解説が解り易かった弁護士ブロガーさん。国籍法改正の意義に触れた後、阿比留記者がブログに掲示した議連(反対派)の案内文についても検討されています。実務的な視点が興味深いです。
【20日21時30分頃追記】認知とDNA鑑定についての補足エントリー。【追記ここまで】
(2008年11月18日)自由帳で数学とか物理とか:国籍法改正について動画にしてみた
(2008年11月21日)自由帳で数学とか物理とか:【国籍法改正】法律は細かいことまで書いてない
(2008年11月24日)自由帳で数学とか物理とか:【国籍法】DNA鑑定の義務を改正案に書けない3つの理由
【19日21時00分頃追記】ニコニコ動画にて、微分積分や人権擁護法案についての解説をされている高校生ブロガーさん。改正の経緯と意義、そして反対派の言説の検討をされています。
【21日21時30分頃追記】二つ目のリンクは、DNA鑑定徹底論への回答と法体系の解説。
【25日2時20分頃追記】三つ目のリンクを追記。DNA鑑定徹底論に拘る方は必読。【追記ここまで】
(2008年11月19日)大法原の隠棲処:国籍法改正論議の違和感
【20日20時00分頃追記】リンク先は碁法さんの別ブログ。違憲判決当時の新聞社説やネット世論の反応、DNA鑑定導入論の落とし穴などについて、言及されています。【追記ここまで】
(2008年11月24日)extra innings:国籍法におけるDNA鑑定問題について
【25日2時20分頃追記】ブログ『木走日記』への反論形式で、DNA鑑定徹底論の問題について指摘されています。【追記ここまで】
(2008年11月17日)la_causette:国籍法改正問題とDNA鑑定
(2008年11月18日)la_causette:国籍法3条1項を合憲限定解釈した件の最高裁判決の事例
(2008年11月22日)la_causette:判例は読んでから引用しよう。
(2008年11月22日)la_causette:国籍法改正とDNA鑑定〜ドイツでの議論
(2008年11月24日)la_causette:男の側がとる行動パターンについての想像力
【25日2時45分頃追記】小倉弁護士の記事を追加しました。【追記ここまで】
e-politics - 国籍法改正
【20日21時30分頃追記】反対派によるものとは別の国籍法改正wiki。【追記ここまで】
法務省民事局:国籍Q&A
法務省民事局:国籍法の一部を改正する法律案新旧対照表
(※1)国籍法改正に関する賛否からは逸れますが、以前から所謂「特定アジア」という言葉の使われ方に疑問がありました。この言葉が使われ始めた経緯は、歴史認識問題等の議論の際に、しばしば用いられる「近隣諸国」や「アジアの国々」「アジア各国」からの批判というものが、実際には殆どの場合は、中国・韓国・北朝鮮の極東三カ国であるにもかかわらず、「近隣諸国」や「アジア」という大きな括りの言葉で表現することによって、あたかもそうした括りに含まれる国家・地域全般または多数から批判がされているかのような印象を受けること、つまり、印象操作への皮肉であり、ウェブ上では朝日新聞に代表されるような左派メディアへの反発としての造語だと思っていました。例えば、櫻井よし子さんの肖像に「あなたのおっしゃるアジアってどこの国のことかしら」(YouTube)という発言を添えた画像がウェブ上に出回っていますが、これも当初はメディア批判の文脈によるものだったと記憶しています。
こうしたマスメディアの物言いに対する対抗としての所謂「特定アジア」という用法については、理解もできるのですが、昨今は、メディア批判や印象操作批判の文脈とは無関係に、中国・韓国・北朝鮮に関する話題であれば何であれ、この造語が用いられがちです。しかし、こうした造語は状況に照らして効果的に使わなければ、陳腐化してしまいますし、皮肉としての効果が薄れれば、ただ自身の政治思想上の偏向を告白しているようなものです。中国・韓国批判なら「中韓」、韓国・北朝鮮批判なら「南北朝鮮」、中国・韓国・北朝鮮批判なら「中韓朝」など、幾らでも代替の表現(というよりも本来の表現)があります。所謂「特定アジア」、その略語としての所謂「特ア」が、差別意識の告白表現になり得ることに使用者は留意された方が良いでしょう。
(※2)議連の案内文に関しては、事実誤認とは別に、「第三国の女性」「第三国人女性」等の言葉も気になります。国籍法改正論議において登場するのは、認知をする父親(日本人)と、子供の母親(外国人女性)と、子供です。父方が所属する国を第一国(日本国)、外国人女性である母方が所属する国が第二国(今回の違憲判決の事例ではフィリピン)だとして、第三国という表現はこの場合、どこを指すのでしょうか。戦後の混乱期において戦勝国と敗戦国、そのどちらでもない、連合国の日本占領によって独立を得た国家を指して「第三国」、その国民を「第三国人」と呼ぶこととも異なる用法です。法律上も、遺伝上も父母ではない、子供にとっては赤の他人、第三者という意味で「第三国」という呼称を使っているのだとすれば、「第三国人女性」と書かなくても、「(遺伝上親子関係にない)外国人女性」と書けば済む内容です。
この悪法を反日主義者、極左官僚、売国政治家、半島系巨大宗教(欧米カルト認定)などが無理矢理通そうとしている。
この法案ことを反対派議員が「極左官僚と売国政治家のクーデター」って言ってるね。
この法案が通ればドンドン外国人が日本国籍取って簡単に日本壊せる。
これは直接的な戦争よりも静かな恐怖で怖い。
行動してこの悪法をつぶそう。
某掲示板でも書いたのですがこの問題は元々移民?のようなものを想定していたのではなく、
単に最高裁判例ででた子供の権利の平等を立法が後追いしている形のはずなのですが、
いつの間にやら「特亜寄りの議員の陰謀説」(あえてこう書かせていただきます)に摩り替わっているのですよね。
こうなると冷静さに欠けて現場の運用とか実情とかの客観的データを持ってきても聞いていただけない状況ですね。
ただ救いは結構冷静な意見をお持ちの方も少なからずいるのでsok様のような意見を書いていくのが良いかと思っております。
実は、大法廷での違憲判決が出た直後、一部の陰謀論大好きな人たちが「最高裁判事はサヨク」などと騒ぐのではないかと踏んで、ブログ世論の動きも見ていました。
しかし、少なくとも判決後2,3日以内のブログ言論などを見た限りは、判決自体に対する受け止め方はほとんどが好意的なものでした。最高裁の論理、特に今回の改正の場合において問題になるのは平等違反とする論理だと思いますが、その点において批判的な見解はあるにはありましたがほんの少数であったと記憶しています。
また、産経含む大手新聞も、政府機関の方も大法廷判決を素直に受け入れており、私の知る限り判決反対といった言説はネットの一部に出た程度でした。
昭和48年の尊属殺違憲判決の新聞紙上の方がまだ論争があったと感じられたほどで、結局、ゲスの勘繰りをしてしまったかと思ってこの件については2,3日で世論を追い回すのは止めてしまい、大問題になっているということを知ったのはつい昨日のことです。
国籍法違憲という考え方自体に批判がなされるのはある考え方だろうとは判決が出てすぐは思っていましたが、大法廷判決の追認以上のことをしているとは考え難い(手当もある)法改正についてばかりネット世論が沸騰したことに驚いています。
今になってハーメルンの笛吹きたる存在が出てきたのではないか、と思えてなりません。
DNAを要求するという見解はいい方で(親子確認のしようがない捨て子は自動的にではなく、法務大臣の裁量で日本国籍を与えるべきだというのでしょうか?)、最高裁にかみついて満足してしまっている人さえいました。
法改正にいくら反対したところで、今後同種事件が裁判所に上がってくれば最高裁はどんどん日本国籍を認めるであろうし、行政もそれを前提に対処せざるを得ないということが分かっていなければ、文字通り批判のための批判以外の何物でもありません。
国籍の重要性や、外国人への国籍乱発を阻止すべしという思考を否定する気は毛頭ありませんが、彼らが日本人の子供の認知にはちっとも求めないDNAを引っ張り出させてまでして血統主義にこだわろうとする理由は何なのか、という点も気になってきます。
単にアンチ外国人、国粋主義が形を変えただけではないか、という推測がゲスの勘繰りであればよいのですが…
>いつの間にやら「特亜寄りの議員の陰謀説」
河野太郎議員には気の毒なことでした。勝手に誤解されて、コメント欄が炎上して、仕方なくコメント欄を閉鎖したけど、閉鎖を解除して謝罪・弁明してみたら、やっぱり誤解は解けず炎上。ネガティブなコメントを書き込む前に、最低限、(1)同改正案が今年6月の婚外子国籍確認請求訴訟を前提としたものであること、(2)閣議決定によるものであること、閲覧者がこの2点の確認を徹底していれば、炎上という事態には発展しなかったと思います。こういうところも、北朝鮮人権法案のときとそっくりですね(あのときは民主党の長島昭久議員のブログが炎上しました)。今回、当人の弁を聞かず、煽られ易く、陰謀論に取り込まれ易い性質は、国籍法改正に反対して本会議場から退席された馬渡龍治議員に対しても向けられました。「変節」と罵ったかと思えば、次には、そのような誹謗中傷は工作員による反対派の分断作戦だとコメントしています。反対派が冷静さを欠いているにしても、自分達の主張を受けて、実際に汗を流した議員に対してまで、このような仕打ちをするというのには、呆れました。
(2008年11月18日)代議士まわたり始末控:評論家
http://blog.mawatari.info/?eid=686451
国籍法改正についてですが、司法の側から見れば、最高裁で違憲判決が出ている以上、下級審がそれに反する判決を出す可能性は限りなく少なく、無国籍児童が個々に裁判で争って勝訴を得るという手間はかかるものの、結論においては違憲判決が踏襲されるでしょうし、行政の側から見ても、違憲であるにもかかわらず既存の法律の存在に縛られるという矛盾があり、法改正によって、これらの手間や矛盾を解消するということは理に適っていると思いました。
DNA鑑定の徹底論にしては、院生さんが指摘されているように、これを徹底するならば、日本人父母とされる子供についても、それが本当に日本人父母のDNAを引き継いでいるものなのかは鑑定しなければ、他人に証明することはできませんし、捨て子の国籍については、私は全く意識していませんでしたが、一時期話題になった赤ちゃんポストの件に当て嵌めてみても、親が名乗り出てこない限りは、DNAの確認が出来ず、無国籍児童になってしまうという不合理な結果になりそうです。
反対論については、違憲判決が無国籍児童の国籍取得の問題に関するものであることを押さえていれば、既に国籍のある子供をどこかから連れて来て認知させるという発想には立たなかったのではないか、と思いました。反対論を唱える人の中に、幾つかの前提を意図的に消し去って、不安を煽っている感がありますね。
1.DNA鑑定徹底論が依然として強いようなので、本文に幾つかリンクを追加しました。『extra innings』さんは、DNA検体が得られない場合として父親が死亡している場合と拒否している場合をあげていますが、これは捨て子についてもいえることです。経済的負担に関しては、収入の違い(富裕層と貧困層)に伴う不平等だけでなく、(1)両親のいずれかが日本人で、かつ、結婚していて、父親の認知がある場合、(2)母親が日本人で、結婚はしていないが、父親の認知がある場合、これらと較べても不平等が残ります。
2.国籍法改正絡みで、請願法を紹介するコピペが出回っていますが、彼らは請願法の条文にあたっているのだろうかという点が、気になりました。請願法の第二条には「請願は、請願者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所(住所のない場合は居所)を記載し、文書でこれをしなければならない。」とあります。匿名のままでは、請願の要件を満たしません。そして、氏名や住所といった個人情報を提供するからには、それなりの下調べをした方がよいということは言うまでもないでしょう。
>私は全く意識していませんでしたが、一時期話題になった赤ちゃんポストの件に当て嵌めてみても、親が名乗り出てこない限りは、DNAの確認が出来ず、無国籍児童になってしまうという不合理な結果になりそうです。
こんな間違いを堂々とかく人間が国籍法を語るんかい
私は馬鹿で無知です。適当なことを書いてしまいましたってこのコメント欄にも書いた方がいいんじゃないの。
御指摘に従い、本コメント欄に関しても、「無国籍児童」という点を、「本人の責によらずして日本国籍が取得できない児童」に訂正します。但し、貴方が上で引用されている箇所に関していえば、DNA鑑定徹底論者の説を考えれば、特に間違いではありませんけどね。法は、そのような不合理が起こらないように配慮しているのであって、DNA鑑定徹底論者が国籍法2条3項前半の文言だけで納得するかといえば、納得はしないのですから。
お前の潔くないところが嫌われるんだよ
お分かりだと思いますが(そのように見ましたが)捨て子の場合は、両親共に知れない場合は、ご指摘の国籍法2条3項目が適用されます。部分的に生地主義の適用を受けるわけです。
しかし血統が判明している場合は、血統主義で処理されます。
フィリピン人と思われる女性は子を日本の養護施設に預けた後、行方不明となったケース(父親は不明)では、血統主義に基づいて日本国籍は付与されませんでした。
このフィリピン人女性の具体的な氏名などは不明なので、フィリピンも子に国籍を与えず、子は無国籍になりました。
両親は不明であれば生地主義が適用されどちらかが明らかであれば血統主義が適用されます。
ですから「捨て子」と言っても異なるケースがあるわけです。
御指摘の件は、アンデレ・リース君のような事例ですね(日本とフィリピンの双方で国籍取得の要件を満たさなかったために無国籍状態になった事例)。また、今回の婚外子国籍確認訴訟におけるマサミさんの事例では、姉妹ともに認知を受けたにもかかわらず、妹は生前認知により日本国籍を取得し、自身は生後認知であったために日本国籍を取得できないという事態になりました。同じ環境で暮らし、ともに認知されながら、認知を受けた状態により境遇に大きな違いが生じ、学校でも級友からからかわれたとのことです。父母の都合や両国の都合という児童の責任によらないことで、児童自身に不利益を被らせることは、社会の在り方として妥当なことだとは思えず、そうした不利益状態を立法により解決しようという今回の法改正は妥当なものだと思いました。
表記に関しては、最初から李怜香さんやiteauさんのように場合分けをして書いていれば良かったと思います。陰謀論の蔓延が酷いからといって、ただ批判するだけでなく、より正確な文章を心がけたいと思います。
私もあちらこちらでこの騒動での「誤解」を解こうと務めてきましたが、彼らは無知であるというよりも、認知が歪んでいるのではないかと思わざるを得ません。ほとほと疲れました。
先にあげた無国籍児のケースは私も何ケースか知っていますが(固有名詞を挙げるのはやめておきます)、何件かはかなり大きく報道されていますよね。
こうしてこれまで国籍関係のニュースを丹念に追ってきた私たち(と敢えて言いますが)が、どうして11月も過ぎてようやく国籍法改正のことを知ったような人たちに「売国奴」呼ばわりされないといけないのでしょう(笑)。
カフカ的不条理とはこういうことでしょうか(笑)。
しかしそうしたレイシストや無知を恥じない連中にこの国や、彼らに蔑まれている子供たちの未来を委ねるわけにはいきません。
だとすれば、言い続けるしかないのでしょう。今日は愚痴を言わせていただきました。
ちなみに日本領内で無国籍児が発生するのは、私としてはどう見ても、児童の権利条約に反していると思います。
一歩すすんで、そうした無国籍児の救済まで盛り込まれればよかったのですが、なにしろ日本人の血統の子の国籍確認でさえこうして猛反対があるわけですから、そこまで行けるのはいつのことになるやら。
一旦表明した態度というものは、なかなか変え難いのかもしれませんね。しかし、判断がつかないうちは何も意見表明しない方が良いかといえば、そうして沈黙を保っている間も、陰謀論は蔓延し、差別意識剥き出しの言説が流通するかと思うと、何らかの表明は必要だろうと思います。今回の場合、田中康夫氏や川田龍平氏のようなリベラル議員も反対していましたが、ウェブ論壇に関して言えばリベラルな人達は比較的冷静で、右派ブロガーやコメンターの露骨な外国人蔑視表現が目立ちました。彼らの中には、直接は陰謀論を展開しないことで、文責や信用低下といったリスクを回避しながら、リンク先として紹介し、読者に参照させることで陰謀論に与する人もいました。そうした行為と距離を取るためには、何らかの表明が必要なのだろうと思います。
固有名詞に関しては、(1)前者の例については出版物もあり同裁判の通称としての使用も見られること、後者については今回の国籍確認訴訟それ自体であり新聞報道にも明記されていたこと、(2)反対派が将来の漠然とした不安・デメリットを過大視して立論しているのに対して、違憲判決や法改正で救われるのは具体的な存在であることを喚起すること、以上2点の理由から固有名詞を出すことに特に問題を感じていませんでしたが、(一)児童に関わる問題であること、(二)法律問題として考えるのであれば甲や乙という表記でも充分であることから、以後、そうした固有名詞表記への配慮も検討させて頂きます。
児童の権利条約との関係で言えば、非嫡出子差別の解消も課題ですね。こちらも子にとっては動かし得ない事情によって、不利益を被らせているものですが、是正しようとする段になれば、また陰謀論が続出するのだろうと思います。